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第23話 虹色の樹

 


 宝火樹の葉を採取後、そこから少し歩いて虹色の樹にたどり着いた。


 うわあっ、いっぱいある。ここら一帯全部そうなんだ。


 なんかこの色彩、目がぐるぐるして変になりそう。きっつい配色だし魔界の植物みたいじゃない?

 いやほら魔界とか行ったことないけどイメージとしてそんな感じ。


 この辺は少し薄暗いけど、一本あたりが大きいから樹の間隔は広く見通しはそれほど悪くない。

 ここなら樹に乗り降りする時だけ気を付ければ、割りと安全に採取出来そう。


 っていうか、高っか! なにこれ見上げすぎて首痛いっ。


 近くで見ると、よりいっそうその巨大さが分かる。前だったら絶対登ろうと思わないやつだよ。


 でも今はどうやって登ったらいいか本能で分かるって言うか。まあ本能がいけるって言ってても躊躇するぐらいの高さだけれども。


 昨日、ロープを余分に買っておいてよかった。一本だけじゃ足りなかったよこれ。

 

 じゃあまず、一番下の枝までちょっと登ってみるか。


 ロープの結び方とか分かんないから、ブンブン振り回して周りの枝に進路を邪魔されながらも、なんとかお目当ての枝に引っ掻ける事に成功した。念のため力をいれて引っ張ってみても外れない。


 よしっ、じゃあ行ってみますか!




 うん、やっぱり、にわか仕立てのエルフでも木登りには強いね、ちゃんと余裕をもって登れてる。


 ――ここまではいいんだ順調なんだいつも。


 それにしてもこうやって近くで見ると不思議な葉っぱだなあ。本当に七色あって、それぞれが鈍く輝いてるような……艶があるっていうかね。

 宝火樹が単葉だったのに対し、羽状複葉なところが違うけど、大きさはほぼいっしょで手のひらサイズくらい。



 じゃあさっそく目の前にある赤色の葉から『鑑定』してみますか。


【 虹色の樹の葉:赤の薬樹葉


 効能:頭痛の緩和作用


 可食:可能


 採取:魔素をいっぱい溜め込んだ煌めく葉を採る

    採取されそうになるとよりいっそう輝くが、

    採ってしまえば光は消える

    採る瞬間さえ注意すればいい比較的簡単な採取 】


 ――ほうほう、なるほどなるほど。



 ついでにその隣の黄色い葉っぱも視てみると、【咽頭痛の緩和作用】があると出た。


 他のもそれぞれ痛みを緩和するやつなのね。胃痛、腹痛、眼痛のほかに歯痛に効くのまである。


 確かに高価なポーション買うよりこれだとお手頃だよね。採取料も安いから、気楽に買える値段だろうし庶民の味方の薬樹ってとこだね。


 採取条件は……またきたよこれ、もう驚かないしっ。

 はいはい、枝も逃げないし、葉っぱも熱くないし、魔法も使わないしで簡単簡単。

 実際、今回は光るだけでそこまで採取に注意しなきゃいけない点はなさそうだし、比較的まともな方なんじゃないのこれ。


 頭上を見上げると、花はもう終わったみたい。

 実になりかけてるのがいくつかあるけど、やっぱり上の枝の方が実も多そう。

 それに葉っぱのキラキラ具合もそちらの方が多い。ということは、薬効もいいって事なのかも、たぶんだけど。


 大きな木だけど一度、天辺近くまで登って確かめてみて、少しだけ採取してこようかな。

 持ち帰るにしても、宝光樹の葉が一つの袋一杯入っててそんなに持てなさそうだしちょっとだけね。


 色別に七種類に分けるのはめんどいし、二種類の葉色に絞って集めるとするか。


 途中、降りる時の事を考えながらいくつかロープを結んでいく。どうせ誰も来ないだろうし、上の方のロープはこのままにしとこ、明日もくる予定だし。


 うん、ここら辺でいいかな。だいぶ登ってきたよ、やっぱり見晴らしがよくって気持ちいい!


 てゆうかこの高さでも軽々と登れたね、心配いらなかった。下を見てもクラクラしないし恐怖心もないし。


 周りの葉は太陽光のせいもあるのか、やっぱり下の葉と違って、どれも色鮮やかで艶々して、キラッキラッ光り輝いててちょっと、ま、眩しすぎるかもっ。


 さあ、採るかって思ったけど……どれも一緒に見えちゃうんだよね、これが!

 キラキラ過ぎてもうよく分かんない。


 宝火樹のように見た目で見分けがつかないので、一枚ずつ『鑑定』してこうと思うけど、これ、状態とか表示されるようにならないかなあ?


 昨日の検証で、意識して使うとスキルって成長するって分かったから、じっと観察してみる。


 はっきりした違いは、分からない。どれも薬効ありってなってるし。

 でも、段々、纏っている気と言うか、輝き具合なんかが違っているような気がしてきた。


 多分これかなって思うのを一枚採ってみる。


 すると、『鑑定』にあったように、採る瞬間だけピカッと、フラッシュを焚いたような光を発したっ。

 一応忠告どおり葉っぱに触れる瞬間から、目を瞑ってたんだけど、ちょっとうっかり目を開けるタイミングを間違えちゃって、すっごく眩しかった!

 ピカピカ光ってる時間って思ってたより長いんですね。なんかクラクラしてきた。サングラスが欲しい!


 この虹色の樹自体も、目の錯覚を起こしそうな、ぐるぐるした色彩な上に、こうも葉っぱに輝かれちゃうともうダメ。こんな高所で目を回しちゃってたら危ないって!


 今までと比べて簡単だと思っていたのに油断できないやつだった。やっぱり採取って一筋縄ではいかないね……。


 目を瞑っててもチカチカして頭も痛いので、聖魔法の『治療』を使って治してみた。

 魔法すごい、すぐ効きすぎて怖いくらいすごいよ……。一瞬で治っちゃった。




 それからは慎重に、時々目を治しながら葉っぱを確認して一枚一枚採っていく。


 二種類の葉色だけを選んで袋に積めていたけど、ほとんど移動せず採れたため、あっという間に袋もいっぱいになってしまった。


 今日はもうここまでにしとこう。


 降りる時のが危なそうなので、ゆっくりと足場を確認しながらロープを伝い降りていく。


 一番下の枝まで降りて、ホッと一息つく。あ――眩しかった!


 初めてのことに挑戦するのってやっぱりちょっと疲れるよね。

 支援魔法で、HP、MP回復を掛けてあるから体力的には大丈夫なんだけど、精神的に疲れている感じ。


 もうお昼近くなってきたので、そのまま樹の上で、少しだけ保存食を食べる。水魔法で出した水を飲んで、ちょっとだけ休憩した。


 魔道具の時計を買うまでは時間も分からないし、あまり遅くならない内に街に着きたいから、まだ早いけど今日はもう帰ろうかな。うん、そうしよう。




 帰る途中、ホーンラビットに二回遭遇したので、いつものように聖魔法と水魔法のコンボでサクッと倒した。


 鮮度を保つため魔石をそのままにして解体せずに、まるごと皮袋で包み背負子の底の方へ入れていく。


 本当は今捕ったばかりのを捌いて焼きたい所だけどやめておこうと思う。ここには弱いとはいえ思いの外、魔物が多くてうようよしてるからね。早く安全な街道沿いに出たい。


 この状態では出来るだけ戦闘をしたくないので、『索敵』で魔物を避けながら、『隠密』を使ってこそこそと隠れつつ、少し大回りして帰る事にした。


 森の浅いところ迄くると、果物や採取出来る薬草、それに野草や茸も割りとたくさん生えてるのを見つけたけど、自分用に少し摘むだけにしておく。

 この森のホーンラビットは、今まで狩ってたのより大きくて重量もあったから、もうこれ以上は欲しくても持てないんです、残念っ。


 今後の為にもマッピングだけしておいてから、警戒しつつ、街道まで進んでいった。






いつもお読みいただきありがとうございます!

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