第17話 冒険者ギルド
さっそく冒険者ギルドの中に入るとこちらも空いていた。まあ、中途半端な時間だしね。
思ってたのと全然違って明るくて清潔そう。全体的に見てお役所って雰囲気だねこれ。
隣に食事をするところも併設されていて、こちらも酒場というより食事メインといった感じのおしゃれなカフェっぽい。
ギルド側にはいくつか受付があるけど、向かったのは笑顔の素敵なおじさ、お兄さんが担当している所。
……年齢とか性別とかそこは受付嬢だろとか野暮なことは言わない、ねっ? ……中々テンプレ通り進まないものダナー。
新人に絡むやつも警戒してたけど、閑散としててまず人が居ないし。まあ、絡まれたい訳じゃないから結果良かったんだけど。
目が合うと、にっこり笑い掛けて手招きしてくれた。いい人!
「こんにちは。新規登録したいんですけどいいですか?」
「ええ、もちろん。大銅貨5枚になりますがよろしいですか?」
トレーを出しながら聞いてくれる。
「はい、大丈夫です。それと後で買取もお願い出来ますか?」
「このお時間なら一緒に出来ますよ。買取はこちらの側のトレーに入れてください。ではまずギルド証の手続きをしますね」
お金と、魔石などの素材をそれぞれ別のトレーに入れる。
手続きの為に聞かれたのは三つ、名前、種族、武術か魔術のどちらが得意かということだけ。
それだけ聞き取り手元の書類に書き込むと、もう登録準備が整ったみたい。
机の上にその書類、魔方陣魔法書を置く。
開かれてるページに書かれているのは、新規のギルド証の登録魔法陣、らしい。
「この魔方陣に左手を置いて魔力を流してください。はい、いいですよ」
魔法陣がふわっと一瞬淡く光り、左手の甲に冒険者ギルドの剣と盾のマークと数字が文様として刻まれていく。同時に魔導書に書かれた魔法陣が霞んで消えていった。
ふーん、使用すると消えるってことは使い捨てなんだね。ギルド証ってこうやって作るんだ。
なんか勝手に想像してたのと違ったけどでもおもしろい、異世界っぽい!
「では次にこちらの聖魔水晶を左手で握ってください。今回は逆に、水晶から魔力を吸収するイメージでお願いします」
そう言って、一センチ四方くらいの小さな水晶のチップを手渡された。
――あ、まだ登録手続き続いてたのね。
言われた通り左手で握り締めて、水晶に内包されている魔力を感じ取りながら、体内に吸収するイメージを高めていく。
自然と目を閉じて集中していると、じんわりと水晶が温かくなってきた。と同時に、魔力が体内に吸い込まれていくのが、わかった……けど、聖魔水晶のチップごと?
――え?なにこれ何なのこれ、いいの?
「あの、水晶消えちゃったんですけど……」
「はい、それで初回登録が完了になりますので大丈夫ですよ。聖魔水晶を使って魔法陣を定着させましたので」
え、そうなの? 成功してる? 失敗かと思って焦っちゃった!
「これって水晶ごと体内に入っちゃたってことですか?」
「いえ、体内に入ったのは、聖魔水晶の魔力だけです。元々、魔素溜まりに発生する水晶なので、内包されていた魔力を全て使い切ると、物質として姿が保てなくなり消えてしまうんですよ」
よく聞かれるんです、初めての方には分かりにくいですよねと苦笑しながら教えてくれた。
ま、まあさすが異世界ってことで……とにかくこれでギルド証の登録が終わった。
改めて見てみると、盾の部分に数字が刻まれている。
この数字がギルドの等級で、一級から十級まであり、当然私のギルド証には一番下の十級が刻まれていた。
なんか刺青みたいで、これなら絶対に失くさないよね。
「このマークはずっと消えないんですか?」
「いいえ、定期的に依頼を受けていただけないとギルド証は消えてしまいます。再発行には銀貨5枚がかかりますのでご注意ください」
「分かりました」
一ヶ月間、何も依頼を受けないと消えるらしい。再発行代は銀貨5枚掛かるとか、すごく高額になるんだね。
「それと昇級時にもギルド証の更新をしますので、その都度お金がかかります。例えば九級だと銀貨3枚、八級以上は一律で大銀貨1枚になります。八級以上は高くなりますが、これは初心者の金銭的負担を軽減するための救済処置ですのでご協力ください」
「ということはこの魔法って高額なんですか?」
「はい、ギルド職員が魔法陣魔法を使えますのでそれで費用は抑えられているんですが、それでも一回銀貨5枚は掛かるんです」
なるほど、九級までは先輩方の援助のおかげってことね。救済処置があるなんて結構しっかりした組織なんだ。
「でもまあ高額ですのであえて昇給しないっていう方もいます。町中中心に活動されてる方々とか。ただダンジョンに入るには八級以上が必要なのでまずそれを目指す冒険者が多いですが」
へえ、ダンジョンは等級制限付きなんだ。八級になるまでどれぐらいかかるんだろう?
「それではギルド証に魔力を少し流してください。先程お伺いした、お名前、種族、特性の他に、ギルドの等級と昇格までのポイントなどが表示された半透明のスクリーンが浮かび上がってくると思います。確認していただけますか?」
おおっ、なんかまたこれも異世界っぽいね!
ワクワクしながら教えられた通りギルド証のマークに魔力を流すと、手の甲の上にスマートフォン程の小さなスクリーンが立ち上がってきた。
画面には次のように表示されてる。
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名前 ローザ
種族 エルフ
特性 魔術
ランク 十級
昇級P 0
違反数 0
登録日 四の月、四の日
ボトルゴード支部発行
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……うん、今日何日か判明したのは知りたかったしうれしいけど、でもこの登録日、不吉じゃないですか?
例の白い部屋で渡されたスキルポイントも44ポイントだったし死を連想する感じで嫌なんですけど。四の月四の日って何なの呪われてるの?縁起悪そう……。
「その表示が身分証になりますので、町を出るときには必ず門番に示して下さい。通行税が免除になります」
なるほど、ギルド証の内容は他の人に可視化できるってことなんだね。
でも魔方陣魔法が得意な人だったら偽造したりとか出来そうじゃない?
おじさ、お兄さんにその辺りを聞いてみると、詳しいことは言えないが対策はされているとのこと。
それに最近では、どの町の門の上にも設置されつつある、「真実の鐘」が鳴り響くので偽造は益々不可能になりつつあるらしい。
ギルド証の偽装に限らず、犯罪者を弾く機能をもつ便利なマジックアイテムだとか。
あの門の上にあった大きな鐘はそういうのだったんだ。『異世界知識』になかったし知らなかった。
異世界知識って便利だけど頼りすぎるのは良くないかも。最新の情報にはちょっと疎いみたいです。
いつもお読みいただきありがとうございます。




