なんで行き先をごまかすの?
仏教系高校卒の割に、寺社巡りがさほど好きでもない妹から「今度、お寺参りに行こうよ」と誘われたのは、彼女の洗脳に気づくよりもそこそこ前のことでした。
こちとら御朱印集めこそしていませんが、平安スキーの寺社巡りスキー。
お宮参りに始まり若宮八幡宮に併設した幼稚園に通ったことから川崎大師を心の氏寺と熱愛し、さらには法隆寺は元より、神泉苑に平安神宮、伊勢神宮に太宰府天満宮、東大寺に仁和寺に石山寺に金剛峯寺と、好きな寺社はいくらでも挙げられますし、勿論、三十三間堂や建長寺、浅草寺、慈照寺(銀閣)といった新しい寺院も大好きです。
一も二もなく了承してはみたものの。
「で、どこに行くの?」と問えば、「行ってからのお楽しみ」との答え。
「え? 言えないようなところ?」と一瞬ひっかかったんですが、「気に入らなかったら入門しなくていいからね」という発言に爆笑するのが先でした。
「私が今までにどれだけ寺社巡りしてきたと思ってるの? 一度だって入門を求められたことなんかないし、そもそも参拝のためにいちいち入門してたらキリがないでしょう? 何言ってんの? それに私の一番は川崎大師だから」
その時は結局うやむやで終わった気がします。
ただ、行こうという気はなくなっていました。
遂にじゃあ行こうよという話になってからも、やれ二泊三日じゃないと行けない、事前の面接が必要になる、参拝には入門の署名が必要だのと要求ばかり突きつける割に、「行ってからのお楽しみ」を繰り返して絶対に場所を言おうとしない妹。
最終的には「だったら行かない」「楽しみでも何でもない」「言えないようなところに行くなんて気持ちが悪い」「有給取り消す」と脅すとやっと、都道府県名だけは明かしてくれました。
ここから寺院名を聞き出すまで、さらなる労力と言い争いを必要とするんですが。
そこまでごまかさなきゃならない行き先って何なんでしょうね?
不信感しかありませんでした。
川崎大師愛だけは伏せられませんでした。




