雨季に来る場所ではない!……ゲイツ視点
私は寒さに弱い。他の人達は、平然としているが、ローレンス王国の冬は嫌いだ。
「ペイシェンス様も寒さに弱い。やはり、結ばれる運命の相手なのでは?」
ただ、ペイシェンス様は、パーシバルに惚れているのが欠点だ。これが、金目当てとか、爵位目当てなら、阻止するのだが……。
『まだか?』
足元で寝ていた天狼星が、目を覚まして、退屈だとぼやく。
「まだまだだ。南の大陸は暖かいだろう!」
ただ、こんなに暑いとは思っていなかった。知識では、北の大陸と反対の季節だと知ってはいたのだが……蒸し暑い!
持って来た服では、過ごし難いので、アルーシュ王子が提供してくれた、麻の服に着替える。
あのゴテゴテした派手な模様で無かったのはありがたい。
そして、相変わらずこの国の料理は辛すぎだ!
「普段は、私の連れて来た料理人が作ります!」
今夜は仕方ない! 態々、北の大陸から竜の討伐に来た客人を持てなそうと王宮での大宴会なのだから。
天狼星は、王宮には連れて行かず、肉をさっと炙って食べさせる。
『ペイシェンスの方が美味しい!』と文句を言っているが、少し前まで生肉を食べていたのでは?
『早く帰ってペイシェンスのクッキーが食べたい!』
それは、私も同感だ! それに、嫌だけど、母の護衛でソニア王国に行かなくてはいけない。
マーガレット王女は、護衛は必要ないだろう。あの色ボケ王も、自分の国の王太子妃になる王女に害は与えない。
ただし、母よりも狙われやすいのがペイシェンス様だ。母は、まぁハニートラップに引っ掛かる年齢ではない。
「パーシバルが側にいるから大丈夫だとは思うが……」
だから、宴会よりも討伐をさっさと済ませなくてはいけないのだ。
次の日から、竜の谷を目指して遠征するのだが、雨だ!
「雨季ですから……」と申し訳なさそうなアルーシュ王子だが、雨だけなら良いが、暑い! 蒸し暑くて、天狼星もうんざりしているのか、大人しい。
『あっ、ドラゴンだ!』
うんざりしていたのではない。天狼星は、探索していたのか?
まだ、天狼星との意思疎通は完璧では無いのだ。
「待て!」と制する前に、天狼星は元の大きさになり、竜の谷へと走り去った。
「ゲイツ様……天狼星は?」
アルーシュ王子が心配そうだけど、なるようにしかならない。
それに、ドラゴンが活発化しているから、竜の谷から魔物が逃げて来ている。
「天狼星なら、平気だろう! 私たちは、竜の谷から逃げ出した魔物を討伐しながら、先を目指そう!」
かなりの数の魔物を討伐し、キャンプに到達した。
そこには、ドラゴンの死体が転がっていた。
『遅い!』と文句を言う天狼星。
「アルーシュ王子、ドラゴンの肉を天狼星にやって下さい」
生肉で良いだろ! 腹を減らした天狼星は危険だ。
ムシャムシャ食べる天狼星に、他の人達は怯えて、遠巻きにしている。
これを可愛いと抱きしめるのは、ペイシェンス様だけでは? いや、ヘンリー君も天狼星に乗っていたな? ナシウス君も、ナデナデしていた。
グレンジャー家は、ペイシェンス様が弟達を育てたから、常識が抜けているのかも。
「若そうなドラゴンですね。素材と魔石は頂きますよ」
アルーシュ王子との約束だ! これを目当てに、こんな蒸し暑いところに来たのだ。
次の日から、魔物を狩りながら、若いドラゴンを間引いていく。
「ゲイツ様、素晴らしい!」とアルーシュ王子に誉められたが、若い馬鹿なドラゴンは脅威ではない。
北の大陸に飛来する事もないだろう。問題は、中途半端に力をつけたドラゴン達だ。
大人の落ち着いたドラゴンは、竜の谷に満足しているが、大人になりかけの中途半端なドラゴンが一番危険だ。
自分の力に酔いしれて、残虐な真似をしかねない。
「天狼星、もう少し強いドラゴンを討伐しよう!」
分かったのか? 頷いた気がする。
「アルーシュ王子、今日は別行動だ!」と言い捨てて、空へと舞い上がる。
天狼星は、ジャングルをものともせず、木を薙ぎ倒しながら奥へと進む。
若いドラゴンは、この数日、天狼星に仲間が酷い目に合わされているので、逃げ出している。
「あそこだ!」
偉そうに、竜の谷の岩山に、一頭のアースドラゴンが鎮座していた。
「ガオォォォォ」と叫びながら、ストーンバッシュ!
「やるぞ!」と天狼星に言う前から、風の爪で攻撃している。
土に風は相性が良くないが、強ければ良いだけだ。
「怒りの雷を受けろ!」
私の雷攻撃と、天狼星の風の爪で、アースドラゴンを討伐したが、これを持って帰るのが面倒だった。
風で浮かせても、重い! 図体だけは、デカいからな。
キャンプ地に置いたら、アルーシュ王子やザッシュが驚いていた。これまでの若いドラゴンの倍の大きさだったからだ。
「ドラゴンステーキが食べたい!」
まだ疲れては居ないが、風呂に入りたい。暑いのも苦手だとは知らなかった。
天狼星も生より、焼いた方が好きみたいだが、牛一頭分ぐらい食べている。
「明日もドラゴン狩りだぞ!」
早く、ペイシェンス様にドラゴンの肉を料理して欲しい。肉は美味しいのだが、飽きてきた。
アースドラゴンの肉の一番良い部位を冷凍しておく。
「アースドラゴン、レッドドラゴン、シルフィドラゴン、食べ比べないとな!」
「えっ、全種類討伐されるのですか?」
アルーシュ王子が驚いているが、味がちがうかも知れない。
「当然だ!」
「ありがとうございます!」と勘違いして感謝しているが、まぁ、北の大陸に来られても面倒だから、少し減らしておこう!




