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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第八章 王立学園を卒業しよう

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収穫祭のダンスパーティ

 収穫祭のダンスパーティの為に、急いで裁縫室に向かった。


 中等科の在校生で、収穫祭の出し物に関係していない人は、早々と着替えて場所を開けてくれた。


「ペイシェンス、お願いするわ!」


 マーガレット王女、リュミエラ王女は、最後の出し物だったからね。一緒に着替えて、髪型もアップに変えなきゃ!


「ペイシェンスにこうして髪を整えて貰うのも最後なのね」


 感傷的なマーガレット王女だけど、ソニア王国訪問が控えているんだ。

 勿論、女官や侍女が付き添うけど、急ぐ時は手伝うかも?


 二人の髪型を整えてから、自分もおめかしする。

 リリーナのドレスが心配で、共布で髪飾りを作ると裁縫の授業に参加したんだ。


 青いドレスに銀ビーズの刺繍。ちょっと目立ちすぎ? その上、共布の銀ビーズ刺繍付きの髪飾り。


 手早く髪を結い上げる。とは言っても、まだ顔立ちは幼いから、きっちりと結い上げると変なんだよね。


 だから、編み込みを使って、少し子供らしさも残した髪型。

 そこにカチューシャ風に髪飾りを留めたら、なかなか良いんじゃないかな?


 眉は朝に描いたままだけど、リップは塗り直すよ! そろそろ、カカオバターのリップクリームが無くなりそうだから、作らなきゃね。


「まぁ、ペイシェンス! なんて綺麗なの!」


 マーガレット王女に褒められたけど、綺麗なのはマーガレット王女だよ。


 今夜は、監視の目が緩い中で、パリス王子と踊れるんだからね。輝いている!


 まぁ、私とパーシバルは、緩いお目付役だよ。

 だって、私とパーシバルもダンスパーティを楽しむつもりなんだもの!


 エリザベスとアビゲイルも、美容の授業のお陰で、まぁまぁの髪型だけど、ちょこっと手直ししてあげる。


「ふぅ、ペイシェンス様が寮から居なくなられたら、これからどうしたら良いのかしら? あっ、また新作のドレスを作って貰いたいわ!」


 お洒落なエリザベスは、マダム・マグノリアの太いお客様だね。


「これまでペイシェンス様に甘えすぎていたのですわ。でも……わからない事があったら、お屋敷に尋ねに行っても良いでしょうか?」


 アビゲイルは、結婚したら家庭を自分で仕切りたいと思っているから、家庭数学はまだマシな方だけどね。


「ええ、いつでもいらして下さい」

 そんな事を言ったものだから、マーガレット王女の目が光った。


「パリス様がペイシェンスの料理をべた褒めされるのよ。チョコレートやお菓子、それに一度、サンドイッチは頂いたけど……」


 エリザベスがマーガレット王女の続きを言う。


「卒業パーティを開きましょう! ペイシェンスの料理を食べてみたいの!」


「お別れ会はしたいと思っていたのですが……期末テストは大丈夫ですか?」


 全員が酢を飲んだような顔になった。


「お勉強会とお別れ会を合同でしたら良いのよ!」


 マーガレット王女はめげないね。


「ええ」と言ったけど、大丈夫かな?


「ペイシェンス様……」

 

 リリーナ、ドレスも何とか間に合い、アイロンも掛けたみたいだけど……変なシワが付いている。

 髪も自分でできるハーフアップに、髪飾りを付けただけ。

 それでも、凄い美人なんだけどさ。


「綺麗になれ!」とドレスの変なアイロンシワを消して、髪もちゃちゃっとアップにして、髪飾りを付けると……絶世の美少女!


「ありがとうございます……私も参加しても良いのでしょうか?」


「ええ、勿論!」


 キャメロン先生が「皆様、そろそろダンスパーティが始まりますよ!」と声を掛けたので、私達も出ていく。


「「「きゃぁぁ!」」」


 押し殺した嬌声は、パリス王子とパーシバルが教室の外の廊下で待っていたからだろうね。


 他にもエスコートする男子学生は多いけど、あの二人の周りの空気、キラキラしている。


「さぁ、ペイシェンス!」


 スッとパーシバルが手を差し出してくれる。

 女学生達の視線が突き刺さる気がするけど、私は婚約者なんだ。


 にっこりと笑って、パーシバルの手を取る。


「とても綺麗ですよ! それ、ペイシェンスが縫ったのですか?」


 裁縫の授業でドレスを縫うのは、中等科三年の女学生も騒いでいたから、パーシバルも知っているみたい。


「ええ、私のは刺繍を頑張り過ぎたみたいです」


「いえ、素敵なドレスを着たペイシェンスをエスコートできるのは、とても嬉しいです」


 パーシバルって、褒めるのが上手いから、嬉しい!


 マーガレット王女とパリス王子も、仲良くお話ししているけど、私とパーシバルは卒業生組なので、暫し別れる。


 ダンスパーティが行われる横の控室には、中等科三年ばかり。

 でも、カエサルやアーサー、それにアルバートなど見知った顔もいるから、少しホッとする。


 女学生は、ドレス姿だけど、男子学生は制服なんだね。

 そして、女学生をエスコートする卒業生もチラホラ。


 ルーシーは? いたいた! 


「えええ、アンドリューにエスコートを頼んだの?」

 私が驚いていると、パーシバルも気がついて笑っている。

「卒業生は、カップルで登場しますからね。相手がいない場合は、普通はクラスメイト同士で組むのですが……男子学生は余ってしまうので、同じクラブの下級生を……」

 

 カエサルやアーサーは? と心配したけど、クラスメイトをパートナーに選んでいた。


 アルバートは、音楽クラブのメンバーだ。


 ドキドキが止まらないけど、そろそろダンスパーティの始まりだ!


「本年度の卒業生の入場です!」


 ラッセル学生会長の言葉で、音楽に乗って卒業生が入場する。


「ペイシェンス、行きましょう!」


 パーシバルが元学生会長だったので、先頭なんだよね。

 でも、パーシバルが落ち着いた様子でエスコートしてくれるので、何とかお淑やかに歩けた。


 卒業生全員が入場したら、ダンスパーティの始まりだ。


 私は、パーシバルの上手いリードに合わせてクルクル回る。


 徐々に在校生達も踊りに加わる。あっ、マーガレット王女とパリス王子だ!


 リュミエラ王女は……リチャード王子が来れなくて寂しそう。


「パリス王子が誘われますよ」とパーシバルが心配しなくても良いと笑う。


「その間、私はマーガレット王女とお話ししていますわ」

 

 パーシバルとダンスするのは楽しいけど、やはり踊りっぱなしは疲れちゃうからね。


 二曲目は、パリス王子が従姉妹のリュミエラ王女と踊るのを、マーガレット王女と一緒に見ながら、話をした。


「ペイシェンス、本当に私の側仕えになってくれてありがとう」


「いえ、本当にマーガレット王女の側仕えになって良かったです」


 二人で、少しだけしんみりしちゃったけど、その後はダンスしまくったよ。


 リュミエラ王女は、アルバート達も誘って踊っている。

 音楽クラブとコーラスクラブとグリークラブ、仲良く活動できて良かったよ。


 カエサル、アーサー、ベンジャミン、ブライス、ミハエル、錬金術クラブメンバーとも踊った。


 私が他の男子学生と踊っている間は、パーシバルがリュミエラ王女やマーガレット王女の相手。


「そろそろ寮に戻りますわ」


 マーガレット王女、リュミエラ王女、エリザベス、アビゲイル、寮組と一緒に戻る。


 ああ、明日の卒業式で、この部屋ともお別れなんだな。

 少しセンチな気分になったけど、卒業式のパーシバルの総代としてのスピーチは楽しみなんだ! 

 学長の話が長くないと良いけど……と思いながら、寮の最後の夜を過ごした。




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― 新着の感想 ―
裁縫の授業で友人を助けるために毎年レベルが上がっていくペイシェンスのドレスも見納めか・・・
期末テスト… 「ひぃ~(恐慌)」 「嫌〜!(泣)」 そっか、かなり矢場居のですね。 学長の話が長いのは、世界が違えど共通です。 学長は上位貴族(普通は公爵か侯爵)なので、まじめに聞かないと不敬の罪に…
ついに明日で卒業か…今回は関係ないが退寮時に「綺麗になれ」をすれば元通りで敷金が還ってくるのはいいよね
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