最後の学園生活へ
ヘンリーを屋敷に一人にするのが心苦しいけど、卒業式までのラスト一週間は、寮で生活したい。
「ヘンリー、良い子にしていてね! 週末には、帰りますから。そうしたら、領地に一緒に行きましょう」
「はい、お姉様!」
可愛いヘンリーを抱きしめてから、馬車に乗る。
王立学園、行く前は弟達と離れるのが嫌だった。
でも、行って良かったんだよね。
マーガレット王女の側仕えになった時も、弟達との時間が短くなる気がして嫌だったんだ。
でも、今は側仕えに選んで貰って良かったと王妃様に感謝している。
マーガレット王女と友だちになれたのも大きいし、リュミエラ王女、そしてエリザベスやアビゲイル、うん、リリーナともね!
友だちは、私の宝物だよ! 勿論、ハンナやソフィやリリー達も忘れていないよ。
でも、あの人たちはマーガレット王女の側仕えでなければ、友だちになったかわからないものね。
マーガレット王女に強引に連れて行かれた音楽クラブ。アルバートの音楽好きには、ちょっと引いちゃうけど、良い思い出。
それに、サミュエルやアンジェラをマーガレット王女に推薦して貰えたのは良かったよ。
伯母様達に「音楽クラブに属している」と紹介される事が多かったんだよね。
つまり、教養ある令嬢として評価が高いんだ。
今は……フェンリルの飼い主、馬の王の主、ワイバーンを討伐して伯爵に陞爵した女の子……やめよう! 考えたら、学園に行くのが怖くなる。
特に、騎士コースの学生達は、ワイバーン討伐について、かなり評価し過ぎている気がする。
でも、騎士コースの学生は、全員がパーシバルの親衛隊なので、その婚約者だから素晴らしくて当然! って感じでもあるんだよね。
私的には、どっちも嫌だ! とは言えないけどさ。
パーシバルは、本当は騎士になりたかったと知っているから、騎士関係と親密なのを拒否できない。
フィリップスやラッセル達は、あまり変わらずに接してくれそう。
魔物討伐の慰労会でも、いつも通りだった。
それは、錬金術クラブメンバーもだ。
中等科のメンバーも参加したんだよね。
「ふぅ、私が伯爵に陞爵されたからと態度を変えるような友だちはいないってことね!」
お祝いは言ってくれるけど、後は普通にしてくれそう。
まぁ、パーシバルと婚約した時の方が、視線で殺されそうな雰囲気だったよ。
そんな事を考えながら、馬車で学園に向かう。
「前は、馬がいなくてレンタルしていたのよね」
メアリーと笑い合う。その後も、馬車が一台だけだったので、お父様と使う時間を決めなきゃいけなかった。
「この馬車は、全く揺れませんね」
ゲイツ様の誕生日プレゼント、本当に非常識なほどの高価なプレゼントは駄目だね。
「私も、来年のパーシバルの誕生日プレゼントは、常識的な物にしなくては!」
メアリーが横で頷いている。今年の魔法攻撃を反射する盾は、令嬢が婚約者に贈るのに相応しくないと思ったのだろう。
「ねぇ、メアリー、何が良いかしら? ハンカチに刺繍をしようかしら?」
それは、メアリー的にも令嬢に相応しいと思ったのか、頷いている。
「そうね! 防護陣を刺繍したら、暴漢が襲って来ても、パーシー様が怪我をされないわね!」
「いえ、お嬢様! パーシバル様は、剣術に優れたお方なので、そのようなハンカチは無用ですわ。パーシバル様の紋章とか、お名前を刺繍されては如何でしょう」
あっ、またやり過ぎたプレゼントを贈りそうだった。
「そうね! ありがとうメアリー!」
パーシバルが貰って負担にならないプレゼントを用意しよう。
ハンカチなら、普段から使うので何枚あっても良いよね!
「普段使いのハンカチ、少し高級なハンカチ、高級なハンカチ! 今から刺繍し始めた方が良いかしら? 百枚ぐらいにしようかな?」
メアリーに慌てて止められた。
「お嬢様、高級なハンカチを三枚で十分です。普段使いは、プレゼントとして相応しくありませんわ」
そうか、大量のハンカチを貰ったら、パーシバルは困惑するかもね!
「メアリー、これからも相談に乗ってね!」
そう言いながら、馬車から降りる。
「さて、最後の学園生活だわ!」
気合を入れる私の後ろで「お嬢様、戦に行くわけではありませんよ」とメアリーの注意が!
「ええ、勿論ですわ」
ペイシェンスがお母様の元に行ってから、どうも猫が被れていない。
最後まで、令嬢らしく過ごさなくては!




