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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第一章 王立学園初等科

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やったぁ! 魔物の肉ゲット!

 金曜に王宮行きになった。王妃様に会うのは気を使うのだけど、今回はヘンリーの誕生日があるから少し嬉しいよ。

「秋は社交界が賑やかで、あまり貴女と会う機会もありませんが、マーガレットの側仕えとして良く仕えてくれているのは分かっています」

 褒めて貰えて嬉しいが、このままマーガレット王女が寮で生活するのか尋ねたい。社交界は何歳からデビューするのか、ペイシェンスをググるが、14歳頃から16歳でデビューする令嬢が多いとのぼんやりとした答えしかない。母親を早く亡くしているし、貧乏なグレンジャー家では社交界デビューなんて遠い話だったのかもしれない。

 マーガレット王女は来年は中等科になり、14歳になられる。社交界デビューもあり得る年齢だ。どの程度のパーティが開かれ、王女がどの位出席するのか分からないけど、王宮から出向いた方が良いと思う。だってドレスとかアクセサリーとか、寮には無いもの。

 でも、私は王妃様に尋ねる勇気を持たない根性無しだ。だって、怖いんだもん。ご機嫌の良い時、マーガレット王女に社交界デビューについて尋ねよう。小心者なのさ。フン


 いつもの通り籠2つ分の卵や砂糖やバターや生クリームだと思っていたのに、馬車には大きな箱が乗せてあった。屋敷に着いて、私は手ぶらで降りるが、ゾフィーは籠を、そして馬丁が大きな箱を屋敷に運び込む。

 令嬢は箱に何が入っているのか気になっても、そんな素振りはしないものだ。とは言え、ゾフィーが馬車に乗って王宮へと帰った途端、ワイヤットに開けて貰う。

「お嬢様、これは魔物の肉ですね。きっとビッグボアと火食い鳥(カセウェアリー)でしょう。子爵様の好物です」

 珍しくワイヤットも嬉しそうな顔をする。魔物の肉なんて、貧乏なグレンジャー家では何年も食卓に上がる事は無かったんだろうね。

 エバに料理して貰おう! ほんの少しだけマーガレット王女の側仕えで良かった気がしたよ。弟達に美味しい魔物の肉を食べさせてあげれるからね。あっ、好物だそうだから父親にも食べさせてあげるよ。


 という事で、土曜の朝からヘンリーと私の為のバースデーケーキを焼いた。それとナシウスに約束した梨のタルトも焼いたよ。だって蝋燭の火を願いを込めながら吹き消すってナシウスの誕生日に言っちゃったから、2ついるんだよ。

 梨のタルトのレシピをエバに渡して作って貰う。下はスポンジじゃなくてタルト生地で、カスタードクリームをたっぷり乗せてその上に薄く切った梨を綺麗に並べて焼く。薄く切るのはエバはとても上手だ。

 ヘンリーのバースデーケーキは、ナシウスの時と同じ。でも、今回は生クリームの絞り袋を作ったから、デコレーションが少し派手。口金も作りたかったな。錬金術クラブに入ったら金属加工とかできるメンバーに協力して貰えないかな? 来年、中等科に飛び級できたら錬金術の授業取ってから決めよう。

 昼食は豪華だった。コーンクリームスープと、ビックボアのステーキ(上級食堂のより薄かったけどね)、それに採れたて野菜の付け合わせ。転生した頃の薄い味の無いスープと、薄くて固いパン、薄くて向こうが透けそうなハムの昼食とは全然違うよ。

 ワイヤットとメアリーが2つのケーキを持って来た。

「ペイシェンス様、ヘンリー様、お誕生日おめでとうございます」

 実際は私は2日前だし、ヘンリーは10日後だけどね。

「ヘンリー、蝋燭の火を願い事をしながら吹き消すのよ」

 真剣に何を願っているのか聞きたいぐらい真面目な顔でヘンリーは吹き消した。

「ペイシェンス様、どうぞ」

 私の願いは決まっている。

『どうかグレンジャー家が飢えたりしませんように、凍える事がありませんように』

 これほど真剣に願ってバースデーケーキの蝋燭の火を吹き消したこと無いよ。生死に関わるからね。

 家族や使用人達に拍手され、バースデーケーキを切り分ける。

「美味しい!」

 ヘンリー、もう7歳なんだね。大きくなったな、なんて感傷に耽る。

「お姉様、この梨のケーキ、凄く美味しいです」

 バースデーケーキは2種類。それを薄くカットして貰った。夕食にも出るし、みんなにも食べて貰うからね。エバは本当に薄く綺麗にカットしてくれる。

 ナシウスは梨のケーキが気に入ったみたい。ヘンリーは両方だね。ほっぺに生クリームとカスタードがついてるね。

「お姉様、ヘンリー、誕生日おめでとう」

 ナシウスからバースデーのお祝いの手紙を貰った。嬉しい、宝物にしよう!

「ペイシェンスも11歳になったのか。子どもが大きくなるのは早いな」

 父親も感傷に耽っているみたい。それより何か職に就いて欲しいな。

 この時の私は11歳になったのを父親が感傷的になっているだけだと思っていた。他の意味合いなんて考えなかった。だって前世だと小学6年生だよ。おこちゃまじゃん。異世界の適齢期が早いのも知っていたけど、貧乏なグレンジャー家には関係無いと思っていたんだよ。

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― 新着の感想 ―
家族を飢えさせるクズ父に分けてあげるなんてペイシェンスは優しいですね 私なら食べたいなら自分で狩って来いぐらい言いそう いくら親でも微塵も尊敬出来ないし食い扶持増えるし存在が邪魔に思えます ここで変な…
[良い点] ナシウスだけに、梨! 出遅れましたが、楽しんで読んでます。生活魔法極めると、動かなくなった古代のアーティファクトとか起動できたりもして… 魔力量とかどんな感じなのかな。 [気になる点] …
[良い点] 食事がみな美味そうです。 王族付きの侍従や女官は名誉職で俸給はさほどでもない…といっても副収入が大きく、近づきになりたい他貴族から便宜を図られたり商人から口利きの礼などを貰ったりするもので…
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