58話 ドゲドー 討伐は順調そのもの
うん。
いたって順調。
かなり順調。
な~んの波風も無し。
俺、犬耳ちゃん、猫耳のグループは、主にギルドに上がってきた情報を元に、急に躍進してきた犯罪集団や、規模が大きい賊を手当たり次第に壊滅させる。という力技で押していた。
というのも、俺は魔王退治の旅で世界中を旅していたおかげで、殆どの場所に対して転移で向かうことが出来、ギルドや冒険者の情報を確認して『キナ臭い』と感じる情報があれば、即、急行し調べる事ができるからだ。
実際に、そうして壊滅させた犯罪集団の中に災厄の種が紛れ込んでいたり、モンスター大量発生の原因を探ると災厄の種に行き当たったりと、そこそこの確立で災厄の種が絡んでいて、成果を上げる事が出来た。
犬耳ちゃんと猫耳は、二人とも……なんというか『ご主人様との旅ハァハァ』といった感じで、スキンシップも『今がチャンス』と、激しい物がある気がする。
が、まぁ雰囲気や関係はもちろん良好だ。
アルクス、クリスティ、赤毛ちゃん、茶髪ロングさん、幼女、イケメン1号、2号、3号のグループは、幼女の気配察知を頼りに、災厄の種に直接接触を図る形を取った。
というのも、俺が参加しないことで、逆に相手に感ずかれずに接近できる。という事が分かったのだ。
そして幼女の気配察知は素晴らしく、時々微妙な差で間違えたりもあるらしいが『獣人の災厄の種』と『人間の災厄の種』の違いを感じる事が出来、獣人の災厄の種は可能な限り説得している。
だいたいの場合、幼女が向かう方向を指し、赤毛ちゃんが幼女を抱えて飛行で接近し、アルクス達は地上を移動して追いかけ、見つけた災厄の種を赤毛ちゃんが遠距離でビリっ! っとやってから捕獲。
獣人の災厄の種に間違いが無ければ、起きてからそいつが強いやつ云々《うんぬん》とかを言い始めるので、赤毛ちゃんが雷でねじ伏せるか、茶髪ロングさんの木刀が火を噴くかで屈服させるような感じらしい。
一応アルクス達も参加しているが、なんか女性陣が前に前に出てるから、本格的に手伝う前にケリがついて、終わってるんだと。
2日に1度の合流の時。
アルクスとイケメン達が
「私達は、役に立てているんだろうか……」
とか、ぼやいてた。
ただ、アルクスとイケメン達が何もしていないかと言うとそうではなく、赤毛ちゃん曰く、自分や茶髪ロングさん、幼女が前に出れるのは彼らのおかげらしく、サポート面でかなり役に立っているらしい。
……まぁ、さらに陰でサポートしてるのはクリスティなんだろうけどな。
アルクスは、イケメン達とかなり良好な関係を築いているようで、赤毛ちゃんのグループもいい雰囲気で回っているらしい。
そんな赤毛ちゃん達の活躍のおかげで、聖人狐耳君の配下に送り込む人員も結構……どころか、かなり増えた。
結果。狐耳君の村は開拓に優れた労働力を抱えた村となり、最近は物流をよりスムーズにするために道の整備に乗り出したり、山を開き始めたりと色々と活躍し、有名になり始めているらしい。
ちなみに洗脳された母親は、基本的には狐耳君の所に一旦預かってもらい、合流した時点で、母親が居るという情報を聞いたら洗脳解除に行っている。
ポヤっとさんな母親達も、たくましいというか、数日すると手伝ったり働いてたりするらしい。強い。
それに、最近は茶髪ロングさんとクリスティが洗脳解除の真似事っぽいことを始めてて、なんかそろそろ俺がやらなくても良くなるかもしれない。
そして。
赤毛ちゃん達と離れて行動するようになって、俺自身にも少し変化があった。
正直、赤毛ちゃんと茶髪ロングさんに、かなり依存していた事に気がついた。
なんせ、とにかく2日一度の合流が驚くほど楽しみになっていたんだ。
赤毛ちゃん達もそれを喜んでくれていて、アルクスやイケメン達と俺が勝手に想像していたような心配事も起きる気配がなかった。
……全てが順調。
離れたことが正解だったように思う。
こうした変化はあったものの大きなトラブルもなく、順調に災厄の種の処理を進め始めると、なぜか、途中から俺のグループに……
エリィが参加する事になった。
どうしてこうなった。
抗議はしたが、エリィ自身の強い希望と姫ということもあり、戦力が最大の安全なところに配置したいというアルクスの要望から、俺のグループなんだとか。
が。
俺は、
……
なんとなく気まずい。
というのもあって、当初は『参加させず王都に置きざりにして放置する』という対応を無理矢理とった。
が、エリィはコレまでには考えられない程アクティブに動くようになっていて、放置すると勝手に行動し、目的地に向かい始めては軽く行方不明になったりするなんて事になってしまうのだ。
行方不明になると幼女に手伝ってもらって迎えに行ったりしなきゃいけないし、かえって手間がかかるので、仕方なく一緒に行動する事にした。
実際に共に行動をしだすと、前よりも剣が使えるようになっていたりと、足を引っ張りすぎる事はなかったし、パーティを組んでいた期間も長かったので、馴染むのも早かった……
……けど正直、めんどくさい。
なんかグループに入ってからは、付かず離れずの距離のクセに妙にべったりしてくるような感じもあって、犬耳ちゃんも猫耳も触発されてベタベタして来たりとか
……ちょっとイラっとした
それが原因でトラブルになりかけたりもしたので、
『めんどくさいから3人で話してみろやー!』
って酒とうまい肴と甘い物を提供して一晩放置したら、なんかうまく収まってくれたみた。
…………ただ。
トラブルが無くなっても、3人でタッグを組んだみたいにして来られたりと、それはそれで面倒です。
……もしかしなくても……俺もなんかの試験をかけられていたりするんだろうか?
と。こんなサプライズはあったが、2グループは順調に成果を上げ続け、時が流れていった。
災厄の種も順調に減少。
俺も赤毛ちゃんも空振りが続くようになり、この事態も収束していっているように感じられ、皆もどこかで終わりが近いと感じ始めていた。
そして今日。
かなり辺境の町で災厄の種の絡んでいなかった賊の討伐を終え、
『あ~また空振りか』と残念に思いつつも、
もうすぐ赤毛ちゃん達と合流……くふふ。
と、少し頬をゆるませながら、辺境の町のギルドに賊の詳細を報告に向かう。
すると、ギルドの受付が
『賊が竜の谷に向けて進行している!』
と騒いでいた。
あ~……もうめんどくさい。
エリィも『これは一大事です!』とか騒ぐ。
まぁ……流石に竜を町につれて来られでもしたら、もっとめんどくさい事になるのは間違いない。
………仕方ない。
軽くため息をつきながら、
辺境の町のギルドに
『おう、それ俺達で何とかするよ』と伝え、出発することにした。
そして王都のギルドに伝言だけを残した。
『少し遅れる』




