48話 ドゲドー料理屋をやってみた(過去形)
っエーイ!
ハンバーガー3、ポテト3!
りょーかーい。
っアーイ!
ハンバーガー2、ポテト2、でまーす。
…………
……
はっ!
……やべぇ。
夢に出てくるな! コレ
あぁ、王都に開店した料理屋だけど……ぶっちゃけ――失敗するよね。普通。
いや、味には自信あったのよ。味には。
でもさ、普通さ、人の暮らしてるところだからさ、ソコに馴染んだ味ってのもあるし、珍しいっていっても『おっ? コレ珍しいな』くらいにしかならなかったのよ。
来る人もさ、たまに食うならいいけど『やっぱいつものとこがいいよな』ってなるのよ。実際のところさぁ。
あれ~? おっかしーなー。
いっつも満員御礼になって、人外の魔物まで変身までして寄ってくる店になってるはずだったんだけどなー。って、予定まるっと狂っちゃったわけ。
で、さらにさ、食材探しも結構大変だったのよ。
なんだかんだ俺がさ、苦労してさ、レシピに合う食材みつけてきたワケ。
採算度外視で。
でも流行んないの。
そんな状態だからさ、その内に俺がムキになっちゃって。
『店を成功させるまで旅に出ない!』って駄々こねたのね。こねるよね? ふつう。
で、みんな真剣になって意見と対策出し始めて『待ちの商売』じゃなくて『攻めの商売』に変えたのよ。
好立地のところを王様に掛け合って出店許可ムリヤリもぎ取ってね。
販売するのも市場で手に入れられる物で作れるハンバーガーとカツバーガーに絞ってさ。
そしたらやっとこさ人気出たのよ。
それも結構ね。
……まぁ地代とか、利益とかいらねぇから割安感も出てたしな。
そしたら、次は周辺の飯屋連中からブーイングが出てね。
え~……コレどーすっかなー。ってなるワケさ。でも殴るわけにもいかないじゃん?
もう自然と放置プレーよ。
したら、その内食材の卸とかに文句言われ始めたらたまんねーな。とか思うくらい多くなってきたの。
で、それを好機とみた、ならずもん達が調子に乗って、イケメンの妹ちゃんにちょっかい出してきたのよ。
そしたら、流石に兄のイケメン1号筆頭に、2号と3号もガチでキレてね。
……ま~……すごかったの。
ちょっと俺もやってやろうかと思ったけど、まるで出る幕なかったわ。
おまえら魔物相手じゃなくて、ここでレベル上がったの実感してどうするよ。って思ったくらい。
ならずもの、絡んだ即日、組織壊滅。
で、それを目の当たりにした飯屋連中のブーイングもピタっって止まったのね。
まぁ店員3人で暴力団壊滅させるような店に文句言ってたって思ったら止めるわな。怖いわ。そりゃ。
ただ流石にこっちも、なんか脅したみたいな気がするし、なんつーか心苦しくなったから『攻めの商売』はやめて『待ちの商売』の通常の店舗営業に変えて、周辺の飯屋連中に『なんかゴメンね』って謝ってまわったの。
価格もちゃんと割安から適正価格に戻す約束してね。
変わりにお昼時はポテトサービスなんてオマケはしたけどさ。
そうしたら、飯屋連中が恐縮しちゃって
「弁当には最適」
「食い物のテイクアウトならここ」
って自分の客に宣伝してくれたのよ。
そうしたら店舗もかなり流行るようになってさ。
ま~~忙しい忙しい。一度忙しくなると、どんどん流行るのな。
で、これ以上飯屋連中の邪魔にならないように
『なんかわりぃから、もう朝昼だけしか営業しないことにするわ。』
って宣言したのよ。
………いや、忙しいのがイヤだったわけじゃないよ。
全然平気だよ。
ちがうよ。
まぁ、それがまた『朝から昼までの時間しか買えないバーガー』ってプレミア感出たみたいで、繁盛店になっちゃった。
あ。店名は『マオーバーガー』ね。
名物はタルタルソースのカツバーガー。
ヨロシク。
店長兼料理人は変顔イケメン。店員をまとめるのがイケメン1号の妹。
みんな日替わりで働くつもりだったけど、なんかもう荒事もないし、ただの店員になったから、王都の住人を雇う事にしたのよ。
で、店員も揃って手が離れたから、ようやく赤毛ちゃんたちと出かけられるようになりました。
俺達も時々様子を見に来るけど、なにより王城の騎士連中とかにファンができたみたいだから、そんなに心配しなくても安心してよさそう。
……まぁ騎士連中は妹ちゃん目当てな気がしないでもないけどね。
さぁ、赤毛ちゃん達。
一ヶ月と大変長らくお待たせしました。
…………
もう『料理屋したい』とか言わないよ。俺。絶対。
料理屋とか、思った以上にしんどいわ。
明日からちゃんと旅に出ます。
…………あ。
ちなみに変顔と妹ちゃん。
付き合い始めたらしい。




