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ダンジョンの入口は物々しい雰囲気に包まれていた。
普段であれば、数人の兵士が入口の監視をするだけで、誰もが、その危険を承知の上で、出入りするダンジョン。
だが、今日に限っては、数十人の兵士がダンジョンの入口に立ちふさがり、その出入りを拒んでいた。
入口の穴を遠巻きに、ダンジョンに入ろうとしていたのだろう、武器を手に持ち、粗末な服を着た冒険者たちが様子を伺う。
穴に降りる階段の前は兵士が立ち。その道を塞いでいる。穴の底にも兵士が立ち、ダンジョンの奥に睨みを利かせている。
「街に入れないとはどういうことだ!」
怒鳴り声が響く。
ダンジョンに繋がる穴の底。
ダンジョンから出て来た所なのだろう。薄汚れた姿をした三人の冒険者の姿がある。
その姿から察するに何日もダンジョンの中で過ごして来たのだろう。
先頭に立つ大男は、金属製の重そうな鎧を身に纏っていた。そこらの冒険者には手に入らない重装備だ。その後ろに立つのは革の鎧を着た男性と、革のローブを着た女性。いずれも冒険者の中では相当に良い装備を身に着けていると言える。
半数程の冒険者は、厚手の服を着る程度で、まともな防具を身に着けていないし、それを買い揃える金もない。それは村から出てきたばかりの少年だからだ。そして数年生き残れると、革の防具を身に纏うようになる。それは、数年間の間に倒れていった仲間達の死に様が頭にあるからだ。
それでも、身に着けるのはせいぜい革の鎧だ。今、怒鳴っているような全身金属の鎧を身に着けるものは少ない。そしてその少数の者達は、肉や皮などの日々の糧を得るためにダンジョンに潜るのではない。一攫千金。ダンジョンから稀に発見される財宝を目指してダンジョンに潜るのだ。
「どういうことだって聞いてるんだよ!」
一攫千金を狙う者達は、ダンジョンの奥深く、誰も足を踏み入れていない領域を探索する。そこには入口付近とは比べ物にならない程に強力な魔物に遭遇することもあり、総じて戦闘力が高い。強くなければ、ダンジョンから帰ってくることは出来ない。
「わ、我々は、指示された通りに」
それだけの強い戦士に怒鳴られる兵士は真っ青な顔で言い訳を繰り返す。




