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寝る場所にある棚の下の草は、生えたままにしておいた。
それは引き抜いて燃料には使っていないという意味で、川にウリボアが水を飲みに来ることが分かってからは、草を結ぶようにしている。自分が引っかからないように場所を決めて、だけど。ブービートラップ? スネアトラップ? どう呼ぶのが正しいのかは分からない。雑学の本だったか、マンガだったか。ウリボアの突進は怖いから、足止めになってくれるとうれしい。
燃料にする草は、少し離れたところから抜いてきた。今は乾かしている。
木があればよかったけど、流石に生えてない。もっと奥に行ったら生えてないだろうか。草の量は少ないから大事に使わないと。あ、蝙蝠の羽とか、燃えるんだろうか。
少し離れた所の草はすぐに使い切ってしまった。
蝙蝠の羽とか骨とか、食べたあとの残骸も燃やしてみたけど、燃料と言うには微妙だし、もう使い切った。
今日はもう少し奥まで行ってみないと。
寝る場所はここだから、時間を目一杯使っても半日で折り返し。
火がないと、もしウリボアを狩れたとしても食べれない。何か探して来ないと。
奥には沼があった。川が蛇行して淀んだのか、水の濁った場所。水の中からも一杯草が生えていて、端の泥のところに踏み込んでしまった。いきなり足が沈みだして物凄く怖かった。
そこまでの道のりでも、それなりに草は生えていたから、すぐに燃料が無くなることはなさそう。でも、草は燃え尽きるのが速いから困る。
ふと思い立って、沼の近くの泥を少し持ってきた。桶に入れて運んだのを棚の上の、もう草を全部抜いてしまった所に、薄くして広げる。桶は川で洗って来ないと。
翌日には泥は乾いて土になってた。黒っぽい土。墨色かも。
乾いた泥を置いて、傍に置いた草に火を付けてみると、燃えた。よかった、これが泥炭で合ってた。石炭になるずっと手前の泥。燃料としては質が悪いとかで、あんまり使われていないというのは、戦争中の逸話だっただろうか。
誰も居ないからだろうか。
ダンジョンの中だからだろうか。
理由はよく分からないけど、最近は昔に読んだ本のことばかり思い出す。




