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ダンジョンの中、更に一日進んだ場所。
とは言っても、慎重に進んできたから、普通に歩けば半日くらいの場所。
この場所は明るい。他の場所に比べて格段に。草原と言えるほどではないけれど、疎らに草が生えているくらいに明るい。明るいと遠くまで見えるから、少し安心する。
あまり先に進むのも怖いし、この辺りでいいだろうか。
ぐるりと辺りを見回す。
辿ってきた川に近づいて見る。水を汲むには水面に手が届く場所が必要だ。ちょっと段差がある。あっちなら、降りれるかも。……うん、大丈夫そうだ。
川とは反対側の壁際は少し高くなっていて、よじ登らないと上には上がれそうにない。
あ、それならそれで、上によじ登ってしまえば安全かもしれない。この辺りではまだ魔物を見てはいないけど、多分、居るはず。寝てる間にウリボアに体当たりされたくはないし、何日も過ごすなら安全な寝床が必要だ。昨晩は怖くてほとんど眠れなかったし。昨日の場所は何度も泊まった場所だから平気かと思ったけど、一人で夜を過ごすのは想像以上に怖かった。
慎重に移動する。
近づいていくと、段差は肩くらいの高さだと分かった。完全に垂直ではなく、物凄くキツイ坂みたいな感じだ。運動の得意な人なら駆け上がれるかもしれないけど、自分は自信がない。荷物もあるし。
体を斜めに伸ばして、手を段差の上に乗せる。地面の固さを確認して、ゆっくりと足を持ち上げる。斜面には小石も多いから足を置く場所は少し注意しないといけない。一歩、一歩、体を持ち上げていって段差の上にあがる。
「ひっ」
びっくりした。
段差の上は、奥の壁まで十メートルもないくらいで、一人で寝起きする分には十分な空間だった。その奥、壁が少し凹んだところに蝙蝠が何匹もぶら下がっていなければ。
コウモリはぶら下がったままで動かない。
どうしよう。別の所を探そうか。でも、あまりうろうろしていたら魔物に出会ってしまうかもしれない。
気を取り直す。蝙蝠は食べれたじゃないか。狩ろう。あれは、自分の食べ物だ。




