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 市場で果物を買う。林檎に似た形をしていて、青色の果物。酸っぱいから人気がないのか、というとそうでもなく、割りといつも市場で売っている。

 街に居る間は屋台で食事を食べることが多い。それは火をおこしたりする手間が割に合わないから。でもこの果物ならそのまま食べれるし、すぐに食べなくても数日は保つ。あとビタミン。この果物にビタミンがあるのかは分からないけど、酸っぱい果物ってビタミンっぽい感じがする。

 後は麦と塩。ダンジョンの中だと腐り難い物を持ち込むか、自分で料理するしかない。今まではおじさんがお金を集めて、全員分をまとめて買ってくれていた。今度からはどうするんだろ。いや、自分を誘ってくれるかどうかも分からない。前の時は、おじさん自身は来れなかったけど、前日の準備まではしてくれていた。だから食料のお金も払ってあったし、自分も参加出来たけど。麦と塩は多めに買う。というかそんなに少しの量では売ってくれない。腐るものではないし、大丈夫。高かったけど大丈夫。


 買い物をしながら市場の通りの端まで来た。そこでなぜか人並みが途切れている。

 見ると仮面を被った人が横切って行った。


(前に革加工ギルドの近くで見かけた人だ)


 街中で仮面を被っているなんて珍しくて覚えていた。

 誰かの話声が耳に入る。


「また医者か」

「最近多くないかしら。職人通りにも出たって言うし」


 医者? あの仮面の人が?

 そんなはずはないという思いと、なぜか納得できる気持ちがぐるぐると駆けまわる。

 そして唐突に思い出す。思い出すと共に体に震えが走る。


(ペスト医師だ)


 それはかつてヨーロッパで大規模な伝染病が発生した時の伝染病専門の医者。その姿は鳥を模した仮面を被った姿で残されていて、その嘴部分には香辛料などの粉末を入れて伝染病から身を守ったのだと読んだ覚えがある。風邪予防のマスクみたいな役割なのに、その姿と、ペストの怖さを前面に出したその文章で、酷く恐ろしい姿だと感じたのだ。

 そのペスト医師を彷彿させる姿の者が、医者だと言う。

 この街に伝染病がある。いや、さっきの誰かの言葉であれば、流行り始めている。


 それは酷く恐ろしいことだった。


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