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仮面をつけて街を歩くのにも慣れて来た。
この仮面を見ると街の住人はこぞって道を開ける。
始めてつけた時は偉くなった気がした。しばらくすると疎外されている気がした。
だが、私の勤めには関係ない。本来、無関係なことなのだ。
淡々と仕事を熟す。
魔を払う。
病とは、魔が人に取り付くことで起こる不調だ。人を簡単に死に至らしめる。それは病魔と呼ばれる。
人が命の力で病魔と闘っているのであれば、それを手助けするのは医者の仕事だ。
だが、病魔は人の命を吸って強くなり、数を増やす。数が増えた病魔は人の体を出て、新たな宿主を探す。故に、生死に関わるほど、病魔に命を吸われた者が居た時、その体の周辺にも病魔が溢れている。
私の仕事は、その場所を浄化し、残った病魔を消し去ることだ。
医者が病人を引き取った後、もしくは、間に合わずに病魔に命を吸われ尽くしてしまった後。その場の浄化を行う。
聖別された塩や、聖水で場を清めたあと、祈りを捧げる。
そのためには、病魔の巣くう場に乗り込まなければいけない。仮面は、そのときに病魔の侵入を防ぐための結界となる。
仮面で身を守り、場を清め、病魔を駆逐する。
それは人々の為になる尊い仕事だ。
だが、ここ最近は仕事が増えている。場の浄化は上手くいっているはずだが、他の、近くではあるが浄化していない他の場所で再び病魔が発見されている。一帯を全て浄化したいものだが、その場所以外も浄化するには手が足りない。
そしてなぜか、住民達も浄化するのをあまり良くは思っていないようだ。
街の人々はこの仮面を見るとこぞって道を開ける。
なぜだろう。




