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「こっちの方が獲物が多いって」

「そっちはこの前行ったばかりじゃないか、こっちのルートのほうがいいよ」


 ダンジョンの中、二人が言い合いをしている。

 二人にくっついてこっちがいいあっちがいいと言っている者や、自分のようにうんざりした顔で一歩引いているものがいる。面倒臭い。

 今日はおじさんは一緒に来ていない。風邪でも引いたのか、長屋で臥せっている。

 おじさんが治るのを待ってたら、いつダンジョンに入れるか分からないからと、他のメンバーはおじさんを置いてダンジョンに来た。自分も解体要員としてナイフを持ってついてこいと連れられてきた。そうでなくても、狩りの準備に用意した松明や食べ物は、全員のお金を集めて買ってるんだから、一緒に行くのが当然なんだけど。

 おじさんが教えてくれたルートは何通りかある。でもそのルートを順番に回るわけじゃない。こっちは誰々が行ったばかりだとか、こっちは居付くのにまだかかるとか、いろいろと理由があってルートを決めているようだった。今言い合ってる二人は知っているんだろう。自分よりも前から居た人たちだから、自分よりは詳しんだろうな。


「そっちは段差ばかりじゃないか、あんな歩き難い所、ウリボアだって居ないだろ」

「そんなこと言って歩くのを嫌がってるだけじゃないか、何度も行ったけどちゃんとウリボアを狩れてる場所だろ」


 いつもはおじさんがどのルートか決めてるから、自分で決めたいのかな。それよりも、あんまり時間が掛かると夜までに水場に着かないんじゃないだろうか。

 どこから光が漏れているのか、ダンジョンの中でも昼間なら歩ける程度の明るさがある。でも、夕方、日が落ちるよりも大分早くダンジョンの中は暗くなってしまう。暗くなったら明かりを点けないと歩くことも出来ない。真っ暗闇だ。だから、出来るだけダンジョンの中が暗くなるよりも早く、水場まで辿りついて、野営の用意をしないといけない。水を汲み焚火をおこせば暗くなっても食事には困らない。逆に、水場に着くのが遅くなると、歩くために明かりを点けないといけなくて、松明を使うことになる。水汲みも真っ暗な中は危ないから、その夜は固いビスケットみたいな保存食だけで済ませることになる。麦粥も美味しいわけじゃないけど、暖かいし柔らかい。保存食は固いだけで味もないし、疲れる。


「あっちのほうが絶対いいって」

「獲物が多いのはこっちだっ」


 早く決めてくれないかな。


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