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新しく来た奴はナイフを持っていた。
俺達の間では、おっさんについて狩りをするのはナイフを手に入れるまで、と言われている。ナイフがないと獲物を解体出来ないからだ。もちろん、武器をくれた恩はあるが、おっさんは後ろから指示を出すだけで、ウリボアを狩るのは俺達だ、いつまでもおっさんの下についている必要がない。
新しく来た奴にそのナイフはどうしたんだと聞いたら、冬の間に兵士と一緒に働いた金で買ったと言われた。
そう言えば、冬の間だけは兵士達がダンジョンに居た。冬は雪で街道が通れなくなるからダンジョンで訓練をしているんだと、そんな話を聞いたことがあった。でも新しく来た奴によると、あれは掃除に入っていたんだと。ダンジョンの掃除とか意味が分からない。でも、お金がもらえるなら別に構わないか。それに住込みで食事が出るんだと。もし、次の冬までにナイフが買えなかったら行ってみようか。
「帰り道だからって気を抜くな」
おっさんがまた何か言っている。そんなことはとっくに知ってるんだ。
街に来たばっかりのときは、ギルドに顔が利いてすごいおっさんだと思ったが、実の所大したことがない。狩りで戦うのは俺達で、おっさんは後ろから、やれ横から殴れだの、今回はこっちの道だだの、指示しかしないんだ。
あれなら、俺達だけで狩りに行ったほうが、獲物をおっさんに持っていかれることもなくなるし、稼げるはずだ。仲の良い奴には話をしてある。もうちょっと、ナイフを手に入れるまでの辛抱だ。そうしたらあいつらと一緒に組んで、おっさんの下から抜けれる。
新しく来た奴は、ナイフを持ってるのになんでおっさんの下に入ったんだ。
野営の時に、仲の良い奴と話してみたが良く分からない。おっさんは、なんか失敗して追い出されて来たとか言ってんだと、そう聞いた。失敗して追い出されるような奴なら、誘うのは止めたほうがいいか。あいつのナイフがあればすぐに抜けられるんだけど、おっさんの下を離れるのに、足手まといを入れたくはない。




