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 ダンジョンの中にある川は、対岸がなく、ダンジョンの壁の下を抉るように奥へと続いていた。流れは穏やかに見えるが、本当に穏やかなのかは分からない。薄暗いからそう見えるだけかも知れない。奥が見通せない水の暗さに恐怖を感じる。水に引きずり込まれそうな、水から魔物が飛び出してきそうな、言葉にすればそういうことなんだろうけれど、それよりももっと何か得体の知れない怖さがあるように思える。


「足を滑らせて落ちるなよ」


 後ろからおじさんが声を掛けてくる。

 今日の野営地から少し移動したところにある川へ、水を汲みに来たところだ。


 ダンジョンでの移動は魔物を狩ることと同じで、獲物は向こうから襲い掛かってくる。そのせいか、罠を仕掛けて取る、ということはしないみたいだ。昔読んだ本だと、動物の通り道を見つけて、その経路に罠を仕掛けて、運よく掛かれば数日後には、みたいなことが書かれていた。それと比べるとここの狩りは短時間で済む。ただし直接戦う分、危険も大きい。

 今日出会ったのはウリボアと呼ばれる小さな猪みたいな魔物だった。

 小さくて、膝くらいまでの高さしかないけれど、こちらを見つけると突進してくる。突進に当たると足の骨くらいは簡単に折れるらしい。おじさんは絶対に前に立つな、横から頭を殴れと言っていた。よく聞いてみると、突進が武器のウリボアの頭は固いが、体を殴ると肉が潰れて値段が下がるらしい。肉に用がない奴らは横から体を切って倒すこともあるそうで、切った場所によっては殴るよりも酷く、体内に残ってる排泄物なんかで肉も皮も臭くなるとか。

 安全で、お肉だけ取れる方法があればいいのに。


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