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ああ? 部屋を借りたいだ?
おめえ見ない顔だな。冒険者じゃねーな、ここは冒険者ばかりが住む長屋だぜ。おお、そうか、これから冒険者になるのか。いいぜ、金はあるんだろうな。
んで、おめえはどっから来たよ。畑仕事って顔じゃねーし、そっちはまだ種まきの時期だ、冒険者になりに来るのはもうちょい先だろ。なあ、どっから来たよ。宿から追い出された? へっ、何ヘマしたのか知らねえが、ダンジョンでヘマしたら死ぬぞ、気をつけろよ。じゃあダンジョンは初めてか、ん? そうか、入ったことあんのか、ああ、春祭りのな、そうか、冬の掃除にも行ったか。俺も昔は兵士でよ。怪我で引退して、こっちの管理だがな。まあ、気にすんな。なんかあったらお前を叩き出すくらいのことは出来るからな。
一応、教えとくか。部屋は内側から棒で、そうだ、それで扉は開かなくなる。寝るときは棒で閉めとけよ。たまに寝てる間に金を盗まれたとか騒ぐ奴がいるが、盗まれたのか落としたのか、それとも飲んじまったのか分からない冒険者には誰も取り合わねえ。てめえの物はてめえで守りな。出かける時も金目のものは持ってあるけ、その桶くらいなら持っていくやつはほとんどいないがな、まあ無くなってたら諦めろ。ああ? 鍵? そんなものはねえ。そこらに歩いてるやつは全員顔見知りだ、知らない奴がいたらそいつが盗人だ。おめえも間違われないように顔売っとけよ。ああ? まあ、何人かは紹介してやるさ。井戸はここ、便所は向こうだ。便所以外でヒリだすなよ。間に合わずに出ちまったら便所まで持って行って捨ててこい。あとは、あの木戸の向こうには入るなよ。あっちは女性用の長屋だ、男が入っていったらぶっ殺されるからな。
おお、丁度いい。こっちだ。おう。こいつは新入りだ。宿の下働きから追い出されてきたそうだぜ。あ? なんだ顔見知りか? おーおー、聞いた聞いた、春祭りのな。お前も肉の調達に出てたんだったか。そうかそうか、じゃあこいつのことは任せるわ。んじゃあよろしくな。




