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失敗した。タイミングが悪かった。
宿に戻ったら、丁度、厨房に宿の主人が居た。だから冒険者のことを相談してみようと思っただけなんだ。ダンジョンに入ると数日掛かる場合もあるから、そうしたら、やっぱりここを出ないと行けないのか、それとも居るときだけの手伝いでなんとかならないのか、そのあたりを少しだけ聞いて見たかっただけなんだけど。
話しをしてみたところに宿の奥さんがいた。
食堂のほうで掃除をしてたみたいで気づかなかった。
で、相談の途中で会話に入ってきて「部屋に置いてやってたのに」「恩知らず」「すぐに出ていけ」となった。意味が分からない。
朝の仕事は部屋代代わりということでお金は貰ってない。それでも日々の食事でお金は出ていく、どっかでお金を稼がないと生きていけないのに、何を言っているんだろう。
ああ、そういえば。
思い出すと、冬の間の兵士との仕事が終わった時にはお姉さんが交渉して宿に置いてもらえることになったんだっけ、その時も奥さんは反対してたから追い出す機会を探していたのかもしれない。従業員用の部屋はずっと空き室のままで、自分が出ていっても空き室なのに。従業員用の空き室はもう一つあるけど、そっちもずっと空き室だ。お姉さんは別のところに住んでいる。この前の春祭りは泊まり客は多かったけど、従業員用の空き室は当然空き室のままだ。部屋が一杯で従業員用の部屋にも客を泊めたいというわけでもない。使う当てがない部屋なのになぜ追い出したかったんだろうか。
よく分からない。
まだ日暮れまで少しの時間はある。急いで長屋に行ってみないと、今日寝るところがない。
荷物はまとめるほどには多くない。体を拭くための布と、水を入れて使う桶、歯を磨くための串、全部桶の中に入る量しかない。寝床に使っていた藁と布団は宿のだからそのままだ。少ない荷物を入れた桶を抱えて宿を出る。




