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冒険者か。
考えたことは何度もある。この街で生活していれば嫌でも目にするし、冬には兵士達と一緒に、春には肉屋ギルドと一緒にダンジョンにも入った。食事係だけど。それでも、ダンジョンの中の様子は見れたし、出て来る魔物も確認出来た。
肉屋ギルドで狩りをして集めたのは小さな猪で少し牙が大きいくらい、兵士達と見たのは大きなコウモリと、骨だけで動く魔物。
でも。といつも通りに思う。
武器がない。
包丁代わりに使っている赤いナイフはあるけど、猪相手にこれで攻撃するのは怖いし、ナイフが折れそうだ。他の、コウモリとか骨からは逃げてもいいけど、猪を狩れないとお金にならない。
それに。ダンジョンに入ったら日帰り出来るか分からない。入口の近くにはあまり魔物がいないようだし。そうすると朝食の支度が出来なくなるから、今の宿を追い出されてしまうかもしれない。
食事代だけでも、毎日お金が減っていく。
武器を買って、三人組に聞いた長屋に引っ越して、手持ちのお金でそれが出来るのか分からない。でも、毎日お金は減っていく。
他に、街の中で出来る仕事があったらいいのに。
食事をしながら、周りの噂話に聞き耳を立てたり、井戸で水を汲みながら話を聞いたりしている間に、少しはこの街のことが分かってきた。商人も職人もみんなそれぞれのギルドに所属していて、ギルドに入っていない者では入り込めないこと、新しいギルド員は、今のギルド員の子供やたまに親戚が入るくらいで、余所者が入れることなんて滅多にないこと。技術を守ったり、取引相手に見下されないように集まるのは分かるけど、丸っきり既得権益の塊で、ギルドという名前で独占市場を牛耳っているようなものだ。自分が一人で割って入れるような所じゃない。
冒険者か。
トボトボと宿への帰り道を歩きながら、頭の中はぐるぐると足踏みを続ける。




