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「一人でいるってことはパーティーメンバーは全滅か?」
「分からんが、多分な」
「脱出していたら迎えにくるだろ、何カ所かに助け出したって話はしてあるんだ」
「戦えるように見えない子供がダンジョンだぞ。厄介事の可能性もある」
「ん? じゃあ俺、話し掛けないほうがよかったか?」
「もう半年以上経ってるんだ、平気だとは思うが、あまり近寄らないほうがいいな」
男二人が話をしながらダンジョンを進む。
何度も通り慣れた道とは言え、もう少し緊張感を持って欲しいものだわ。
「お前さんはどう思うよ」
溜息をつきながら答える。
「近寄らないほうがいいと言うのは同感ね。ダンジョンの情報もろくに持ってないようだし」
魔法のトラップが残っているような奥地へ行ったのなら、もっとダンジョンのことに詳しくないとおかしい。だけど少し話して分かったのは、駆け出し程度の知識しか持っていないということ。ダンジョンに入ってどちらにお肉になる獲物がいて、どう進めば私達の行くような未踏区画の探索へ進めるのか、それを分かっていない。それ所か、未踏区画がまだまだあるという認識すら。
そう考えると、誰かが厄介者をダンジョンへ捨てに来た、という可能性もなくはない。幸い、救出分の手間賃は少年が着ていた服で得られている。これ以上かかわる必要はないだろう。
「それより、そろそろ話しは終わりにして周りに注意を向けて頂戴。昔、この辺りで大蜘蛛が居たの、私、忘れてないのよ」
暗い天井から八つの眼で見降ろされた気持ち悪さはまだ覚えている。
思わず魔法で燃やしてしまったら、上から蜘蛛と巣が燃えたまま降ってきてすごく大変な目にあったのだ。
「へいへい。俺も頭から火を被るのは御免ですよっと」
その言葉の後、会話は途絶え、ダンジョンには静かな足音だけが残った。




