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 閉められた扉の前でしばらく待つと宿の主人が現れた。

 扉を閉められるのも、顔をしかめられるのも毎日のことで、もう何も思わない。昔は何か思ったような気もする。

 宿の主人に従って、裏口からトイレに移動する。この中の汚物を桶に入れて運び出すのが俺の仕事だ。場所によっては桶が一杯になるまで汲み取ったか確認してくる所や、逆にそんなものは見たくないとばかりに近づかない所もある。近づきたくない人は代金の銅貨を投げて渡してくるのが少し困る。ちゃんと受け取れればいいが、どこかに落ちてしまったり、悪い時には桶の中に入ってしまったりする。

 そういう意味では、ここは悪くない客だ。代金は手のひらに落としてくれるし、桶の汲み取った量もそんなに細かくは言って来ない。


「まだ残ってますが、どうします?」

「明日も来てくれ」


 宿の主人の顔はしかめっ面のままだ。

 街で祭りがあった後は、いつも宿の回数が増える。回数が増えれば稼ぎも増える。それは良いことだ。


 宿を出て、裏門から街の外に出る。街道に繋がっている表門は使うことが許されていない。

 門から出て少し行くと大きな穴があるから、そこに桶の中身を捨てる。街の外は兵士が巡回していて、あまり会うこともないけど、もしこの穴以外に捨てていることが見つかったら殴られる。だから捨てる時には注意しないといけない。俺は注意するよりも穴に捨てたほうが簡単だから穴に捨てている。

 桶の中身が空になったら、次に行く所を考える。宿、大きな店、お屋敷。汲み取るのはお金持ちで人が多いところだけだ。他のやつらは道端で出したり、道端に捨てたりしている。

 あの屋敷は昨日行ったし、あっちのギルドは3日前に行ったし。あそこは行きたくないけど、他にないなら行かないと、一カ所だけだと飯代には足りない。

 もう一度街の中に入るために、裏門へと歩を進める。


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