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 日の出と共に水瓶を持って調理場に入る。

 扉を開けたまま固定して、窓も開ける。その明かりを頼りに竈に火を入れる。

 窯全体に熱が回るまでの間に、小麦粉をコネてパン生地を作る。春祭りの間は、近くの村のやつらが街に来るから、作る量も多めだ。村では麦粥が主食らしく、パンは街に出て来た時くらいしか食べれないと、村人たちがこぞって買っていく。

 窯の温度が安定したら、出来た生地を奥から並べていく。火の傍での作業だ、春先のこの季節でさえも汗だくになる。パンが売れるのはいいが、これだけの暑い思いをして、窯代として税も払って、割りに合うのかたまに疑問に思う。だが、ダンジョンに潜る気もないし、街を出るつもりもない、そして街の中で他の仕事につくなんて今更出来ない。疑問を汗で流して今日もパンを焼く。


「おはようございます親方。今日はどこから持っていきますか」


 日も上りきり、扉の外に人通りが見え始める頃に、見習いの若手が入ってくる。


「今日は露天からだ、春祭り用に数が違うからな。間違えんなよ」


 焼きあがった分を持たせて配達に送り出しては、またパンを焼く。

 昼前までに必要な分は焼き上げ、見習いと一緒に昼飯を食べる。

 午後からは材料の仕入れと明日の仕込み。それ以外に少量だが、夜の露天商に渡すパンを焼く。午後から焼くパンは見習いにも手伝わせて生地の作り方、窯の見方を教えていく。


 春祭りなんて言っても焼くパンの量が変わるだけで、いつもと同じ生活だ。

 いや、帰ったら妻が広場の露天について話してくるだろう。去年は春先にしか出回らない果物が安く売っていたと言って、せっせと干し果物を作っていたっけ。その前の年は春らしい色合いの布が安かったと言って、服を縫っていたな。今年は何を見つけてくるだろうか。


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