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荷物を担いで、歩く、歩く、歩く。
前にはあった槍が今回はないのがせめてもの救いか。
全部装備も食料も込みで用意してくれた兵士の仕事と違って、今回の仕事では装備は個人持ちだ。
狩りを仕事にして受けている冒険者ならともかく、食事係を受けて来ている自分が武器も防具も準備する必要はない。前に買ったナイフだけは腰に刺してはいるが、鎧はなく、皮のジャケットを着ただけのいつもの恰好でダンジョンを歩く。
歩く隊列は結構適当だ。
最前列に武器を持った冒険者が一塊。一番後ろにも一塊。あとは荷車を中心に適当という感じ。
一応、出発時に誰々は前、誰々は後ろって指示が出ていたから、その順番で隊列を組んでいるんだとは思う。隊列と言えるほどに整ってはいなくても。
意外だったのは、個人で運ぶ荷物は自分の持ち物だけで、食料は始めとした資材は荷車と荷物運びを仕事としている人たちだけで運んでいたことだ。おかげで兵士達とダンジョンに入った時より身軽に進める。その分なのか進むペースが速い気もするけど、ずっと奥までいくのだろうか。
前に入った時も思ったけど、このダンジョンは広い。
丸一日歩いても全然端にはつかないし、数日かけて歩いてもまだ誰も入ったことのない場所が残っている。
通路というには広いし、天井も高いからちゃんと目印をつけてないと迷ってしまうだろう。ただ、広い分、風もそれなりにあって、ダンジョンと言う言葉から連想するような閉鎖空間とは感じない。だからこの中で火を使った料理も出来るんだろう。いや、でも、そもそもこの街では酸素が無くなると酸欠になるとか、そういう知識って一般的なんだろうか。しばらく暮らしてみても文字を使ってるところなんてごく限られた場所で、露天なんか値段は全部聞かないと分からないし、屋台もメニューを掲げているところなんて見たこともない。もしかして、知識という意味では自分が学校で勉強してきたレベルでも武器になったりするんだろうか。
取り留めもないことを考えながら、ひたすら歩く。目的地まであと何時間かかるのかは、知らない。




