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やれやれ、書類を見るのは疲れる。
切った張ったで生きてきた俺が、肉屋ギルドに入ることになるとは人生不思議なものだ。
入ってすぐに文字を覚えさせられたのは辛かった。まだまだ書類は苦手だが安定した生活が手に入るならしょうがない。とは言え、書類の中身はこの春のダンジョン遠征で準備する物資についてだ。肉屋ギルドに入れたのは僥倖だが、あれはダンジョンに入る人間を狙ってたんだろうな。まあ、安定した生活なんてそんじょそこらには転がってない、自分のような故郷を飛び出てきたコネのない人間には特に、だから文句はないが書類を見るのは疲れる。
今回の遠征は肉屋ギルドから解体人を、運搬用の人足は肉屋ギルドの下男の他にも肉屋ギルドの見習いやら皮職人のギルドの見習い。まあこれは通過儀礼みたいなもんだ、この街で働くなら一度くらいはダンジョンの中を経験しておけというな。あとは冒険者を狩りのために雇っているし、他のギルドからも何人か手を貸してもらっている。
荷車や狩りに使う武器、解体用の刃物、そういった道具を修理する職人に、ダンジョンで拠点を作るための木工職人、食事を作る人手は宿屋ギルドから人を借りている。当然、対価は支払ってはいるが、借りは借りだ。まあその辺はギルドの上役達がなんか考えるんだろ。
それよりも心配なのは冒険者のうち、この春に村を出てきましたと言わんばかりの若造共だ。
狩りの仕方もまともにわからん若造共には拠点の警備を中心に働いてもらうが、ベテランと組ませて狩りの経験もさせる必要がある。冒険者で生き残る奴は少ない、命は拾っても手足の一本も失って引退する奴なんざそこらじゅうにいる。だからこういう機会に少しでも狩りの方法を教えて生き残れるようにしてやらないといかん。
それは俺が冒険者をやっていたからだけではなく、肉屋ギルドの方針だ。
冒険者が増えてくれれば、手に入る肉の量が増える。この春の祭りの準備だって肉屋ギルド主体でやらなくても勝手にやってくれるかもしれない。
今回の遠征に出るのは42人。そのうち冒険者は18人。3パーティに分けてうち一つは拠点の警備に回したいところだ。日替わりで警備につくパーティーを入れ替えて、狩りに出るパーティーにつく人足をそれぞれ4人、荷車を1台と言ったところか。解体は拠点まで獲物を持ってきてからだな。
さて、最後の確認だ、持ち込む食い物がちゃんと揃っているか確認してくるか。ダンジョンの中で腹を空かせるのは勘弁だ。




