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まったく嘆かわしい!
魔物の皮のほうが安いだ?
魔物の牙のほうが折れないだ?
そんなわけがあるか。何も知らぬのに、無知を誇って誤った知識をこれ見よがしに語りおって!
確かにダンジョンに潜れば、材料となる魔物が多くいる。
命がけであれば材料は豊富に手に入るだろう。
そう、命がけであれば、だ。
毎年何人の者達がダンジョンから帰らぬと思っている。
そして魔物の皮とて、加工が容易いわけではない。売られる数が多いから糸を編んだ布よりも安くなっておるだけで、手間はむしろ魔物の皮のほうがかかる。
魔物の牙とて、使い続ければ折れる。ポッキリとな。前触れもなく折れる。
鉄は本来粘り強い金属じゃ。折れるよりも前にまず曲がる。武器であれば、曲がったままでもその戦いを凌ぐことは出来よう。だが、魔物の牙は折れる。曲がらずに折れる。武器を闘いの最中に失うことの恐ろしさを考えたことがあるのじゃろうか。
それを指摘すれば、粗悪な鉄を持ってきては鉄だって折れるとぬかしおる。
無知を自慢する愚か者よ。
魔物魔物と、食料も道具も魔物に頼りおって。
そもそもダンジョンとはなんだ。
得体の知れる穴、そこから湧き出る魔物。
そんなものに街が依存してどうするというのじゃ。
ダンジョンの中に魔物がどれだけいるかも分からず。増えているのか減っているのかを計ることもせず。ただ漫然と魔物に依存することの愚かさよ。
魔物がいなくなれば街が干上がる。逆に魔物が多くなりダンジョンから溢れ出てきたら街は滅びる。
魔物がいなければ干上がるのならば、いつか街が魔物に滅ぼされる、残った選択肢はそれだけじゃ。
いざとなった時に魔物を殲滅し、街を生き延びさせるためには魔物に依存してはいかん。他の街と交易をし、布を、鉄を、食料を仕入れる道筋を保たねばならん。
それがどうだ、最近は刃物と言えば魔物の牙で、鉄製など誰も使っておらん。
服と言えば魔物の皮で、布で作った服など街の外から来た者しか身に着けておらん。
まったくもって嘆かわしい!




