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 キャベツに似た細長い葉野菜を、一枚ずつ剥がしては水を張った桶に入れる。

 剥がした葉は土を落としながら食べやすい大きさに千切る。

 葉は全体を水に沈めながら洗わないといけない。

 葉についていた虫が桶の中でもがいている。


 断片的に確認出来た所だと、自分の仕事は朝食の支度の手伝いまでらしい。

 それが終われば自由だけれど、手伝いで相殺されるのは使用人用の部屋への宿泊代だけで、食事はつかない。

 ここで食べるにしてもどこかで食べるにしても、食事代は稼がないといずれは飢えることになる。

 当面は冬の間の仕事で得たお金があったとしてもだ。


 何か考えないといけないのは分かっている。

 それと、ここの匂いは嫌いだ。

 それが食堂でも、厨房であってもゴミの匂いからは逃げられない。

 それが匂いだけであれば、鼻がマヒするんだろう。

 実際、匂いを感じるのは扉を潜った直後だけで、働いている間は気にもならないのだから。


 でも。

 それでも匂いがあることでの警戒心、いや、端的に言えば怖い。

 いつこの匂いの元に襲われるのかと。


 それは病気。

 元の生まれ育った町では無縁だった、そう思っていた感染という経路は匂いという端的な存在証明によって自分を追い詰める。

 いずれは襲うと。

 街中にある家畜の糞尿。雨のたびに泥まみれになる道。井戸からくみ上げる地下水は、大地という天然のろ過に任されるだけで、その安全性を誰かが確保しているわけではなく、くみ上げの労力から清潔を保つほどの量を日常的に使うことは出来ない。

 それはただの妄想なのかもしれないけれど、出来れば、いや、出来るだけ、ここから離れる方法を知りたい。


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