表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/187

29

 荷車を引きながら、数人の男たちが街道をゆく。

 春になり、村に帰るその顔は明るい。

 荷車には街で買った新しい農具と、塩や砂糖といった調味料、そして布や古着。

 あとは個人個人が大事そうに抱えた家族への一品。


 冬の間に領主に雇われた給金で、村に必要なものを買って帰る。

 そこには無事に仕事を終えられた安堵感が滲む。


 村と馴染みの商人には、秋の作物を引き渡したときに、春に買って帰る品々と値段の折り合いはつけてある。

 今年は領主からの賃金で十分に賄えたため、わずかながら家族へのお土産も買うことが出来た。


 そんな中、一人の少年の顔だけは不満げだ。

 帰り道。ダンジョンの中や、宿舎での暮らしを思い出しながらの道行きの会話。

 一冬の間とは言え、話題には事欠かないが、共に過ごしていた間柄では知っている話題。

 そこで繰り返される少年の失敗談は、きっと村に帰ってからも面白可笑しく吹聴されるのだろう。

 それが分かってるだけに面白くない。

 追加報酬がもらえず、幼馴染へのお土産が安っぽい髪留めになってしまったことも面白くない。

 受け取ってもらえなかったり、笑われたりしたらどうしようかと思うと気が滅入る。


 村に帰る男たちの顔は明るい。

 一人の少年を除いて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ