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まったくついてない。
いつも、馴染みの商人が入れてくれる野菜と肉。
普段の料理はそれで間に合うが、たまにはこうして市場に買いに出る必要がある。
大抵は塩や日干ししたハーブ、砕いて辛味に使う木の実。
今日もそんな買い出し。
ただ、嫌なことに買うのは塩。あれは重いから嫌い。そして奥さんのわがままで果物も買っていかないと。
出かける所を見つかるとはついてない。
「そこのきれいなお姉さん!取れたてのポメロだよ!一つどうだい」
威勢のいい声に笑顔だけを返すと、そのまま通り過ぎる。
ポメロは酸っぱいから嫌い。
果物を買うなら甘いのがいい。エドゥリスを食べたいけど、あれは夏のものだし、山を越えた向こうでしか育たないみたいで随分と高い。
二つに割った時の甘酸っぱい香りも好きだし、スプーンですくって食べると柔らかい果肉と固い種が混ざって楽しい。
奥さんから頼まれた果物も甘いやつだし、まとめて買うから少しおまけしてもらえないかな。
もちろんおまけでもらった分は自分の物にしよう。
あれは皮が固いから割るのにはちょっと苦労するけど、中は柔らかいし、春先の今しか食べれないし。それに近くの村で取れるからあまり高くない。
そう思うとちょっと気持ちが軽くなった。
でも籠に入れた塩は重い。
あれ?前を歩いてる人、黒髪だわ。
珍しい黒髪を見て、あの子を思い出す。
というか本人じゃないの?あれ。




