２３

　朝なのに暗いし寒いし、冬だからと言えばそうなんだけど、だからこの季節は嫌い。ここ数日は少しだけ暖かくなってきたし、もう早く春になって欲しい。

　水が冷たくて手が震えるのも嫌い。水の冷たさはまだまだ変わらない。

　あの子が居たら。水汲みの仕事なんて任せられるのに。

　働き始めたときは桶一つ持ち上げられなかったあの子だけど、何ヶ月かで水汲みくらいは一人で出来るようになったし、朝食前の手伝いも任せられるようになった。

　でも、やっと任せられるようになって、朝は遅く仕事に行けるようになったところで居なくなってしまった。

　宿の主人は言葉を濁していたけれど、奥さんに追い出されたようなものだろう。

　親戚でもない自分を雇ってくれたし、悪い人たちではないんだけれど、奥さんはちょっと、いや、結構お金にうるさい。

　それでいて計算は出来ないというのも笑えるけど。

　出来ないくせにあれが高いこれが高いと値切ることだけには熱心だ。

　大方、私一人で手伝いは足りてたのに、あの子の食事代がかかるだけで無駄だとでも言い出したんだろう。

　私には夜の仕事もあるんだから、朝はあの子を使ったっていいと思うんだけど。

　一人で手が足りるからって一人で昼も夜も働くのはキツイ。

　かと言って、変に意見をして給金が減らされてしまっても困るし。

　今だって昼の仕事だけじゃ暮らしていけないくらいに少ないのだから。