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「突けっ!」


 号令に合わせて長槌を突き出す。

 隣で振るわれる長槌が合わせて三本、骸骨の体に突き刺さりその骨を砕いていく。


「まだだ、突けっ!」


 長槌を引き戻し、再び号令に合わせて突き出す。


「よし、よくやった! だが油断するなよ、腕一本でも動いてくるぞ! 距離を保って突けよ!」


 崩れ落ちる骸骨を前にしても隊長の攻撃指示は止まらない。

 実際に骸骨は地面に転がりながらも、残った関節でギクシャクと立ち上がろうとしている。


 さらに何度も突いたあと、やっと隊長からの攻撃指示が止まった。


「よし、お前は砕いた骨を袋に詰めろ。残りの者は周囲の警戒だ。指が残ってる場合は砕いてから詰めろよ」


 仲間達が周囲を警戒する中で、砕いた骨を袋に詰める。

 ダンジョン内での俺達の仕事は、基本的に骸骨を砕いて焼くことだ。


 骸骨は放っておくと骨が元に戻って動き出すらしく、倒したあとは回収してまとめて燃やすそうだ。

 ダンジョンで骸骨を倒した場合にはそれが誰だろうと焼くところまで面倒を見るものだ、と言われたが、わざわざ俺達を雇ってまで骸骨の始末をしている所を見ると、焼かない奴が結構いるんだろう。


 焼くのには結構な手間がかかるし、ダンジョンの中でそれだけの時間を掛けると他の魔物にも襲われかねない。

 だからと言って持って帰るかというとそれこそありえない。そんなものを持って帰るくらいなら少しでも肉や戦利品を拾って帰るに決まっている。


 骨を袋に入れ終わり、長槌を担いで立ち上がる。


 長槌は、長い棒の槍のような武器だが、先端には刃の変わりに四角い塊がついている。

 骸骨には刃で切るよりも、鈍器で砕いたほうが効果が高いからと言って開発された武器だそうだ。

 初めて渡されたときは武器には見えず掃除道具か何かかと思ったが、実際に使って骸骨と戦ってみると武器なんだと実感する。


 骸骨は骨の腕や、たまに剣を持った骸骨が居て、そいつらは剣を振ってくる。

 しかし、腕よりも、剣よりも遠い場所から突くだけで骨を砕けるこの武器なら安全に戦える。

 いまのところ、六人編成のうちの隊では怪我人はいない。

 いや、若造が一人、蝙蝠に驚いて転んでたが、怪我というほどのこともないだろう。


 問題があるとすれば、普通の、肉のついた獲物相手には槍ほどの効果がないところか。

 獲物を倒せば肉が優先的に食えるし、全部が食えないかわりに報奨金が出る。出来れば何匹か仕留めて小遣いを稼ぎたいものだ。


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