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あれ? と思った。
ダンジョンの出口に兵士がいない。
前に街に来たときは、兵士が居て、マスクを外さないと通してくれなかったのに。
前の肉がなくなるより前にと、ウリボアを狩った。
狩りに出たその日すぐにというわけには行かなかったけど、なんとかウリボアを狩れた。
今度は、皮が安く買い叩かれないように、すぐに売りに来ることにした。
塩はまだ平気だし、麦も少し残ってはいる。
それでも、この前買った塩の値段を考えれば、皮が安くなってしまうといろいろと困る。いつかは荷車的なものも欲しいし、お金はあればあるだけ助かる。
それに食べ物はまだ平気でも、新しい布が欲しい。新しいと言っても新品は高いから中古になると思う。体を拭くのに使っている布はなにか臭い。
出口を通って街に入る。
それは廃墟のようだった。
ダンジョンの出口がある穴から、階段を上がって街に入ったのに、見えた景色は廃墟のようだった。
焼け落ちた建物、崩れた煉瓦、瓦礫の山。
建っている建物も、焼け残っているという感じで、壁や骨組みが残っている程度。
無事な建物は一つもない。
何があったんだろう。
思い浮かぶのは、戦争で焼かれた街の写真。
軍の基地だけでなく、普通の街にも爆弾が降り注いだという、廃墟の写真。
でも違うよなあと思う。
この街に爆撃機がくるとは思えない。自動車すらないし。
そうなると火事だろうか。
一軒だけならともかく、ダンジョンの出口がある広場から見渡す限りでは、全部の建物が壊れている。火事ってそんなに燃え広がるものだろうか。
ああ、でも自動車がないから消防車もないのか。
水も井戸から汲まないといけないし、火事を消すのは大変そうだ。
ここで見ていてもしょうがない。とりあえず皮を売らないと。
店がなかった。
皮を売るお店まで壊れていて、ちょっと覗いてみたけど誰もいない。
それはそうだろう。あれだけ壊れていれば。
残っている壁もあったけど、壁が倒れてきたら怖いから、入口から少し覗いただけでやめた。
困った。
街に誰もいないわけではなく、何度か人の姿を見かけはした。
でも、露天が並んでた通りにも行ってみたけど、露天は一つもなし。歩き回った限りだと、ほとんどの建物が壊れている。
大きな屋敷とか、壁に囲われていて門があるような、上流みたいな区画は無事みたいだ。飛び火するには門から屋敷までの距離があったから、燃えずに済んだのかもしれない。壁は石造りに見えたし。
でも、皮を売ることも、食べ物を買うことも出来ないのは困る。
もしかして、街を出て、別の街に行ったほうがいいのかも。
でもそうしたらダンジョンでウリボアを狩ることが出来なくなるし。第一、他の街の場所を知らない。
考えがまとまらないまま、廃墟のような街を出てダンジョンに戻る。
当面の食べ物はあるから、しばらく時間が経ったら直っていないかと、都合の良いことを考えながら。




