184
何かがハジけ、火柱が上がる。
火の勢いは増すばかりで、火が消える理由など一つもない。
始めに燃えた肉屋ギルドの建物には、燻製用の燃料が大量に保管されていたのも不幸を積み上げる一因となった。
元々、街は壁に囲まれ、容易には広げることが出来ない場所だ。
そのために、家は縦に積み重なり、道には露天がひしめき合うことで人口の増加に対応してきた。
呪いの蔓延と共に、道を塞ぐ露天の数こそ減ったものの、人が居なくなったからと言って建物が減ったわけでもない。
そんな建物が密集した中での火事は、容易に火を燃え広がらせる。
本来であれば、それに対応するのは兵士であり、街の住人だ。
僅かながらも水を掛けて火の勢いを落とし、周囲の建物を壊して延焼を防ぐ。
「てめえっ!」
それを乱闘が台無しにした。
殴り合う肉屋ギルドと冒険者たちの乱闘は、本来、火を消す役割を担うはずの手を止めさせた。
止めに入った兵士が殴られ、転がった肉屋ギルドの職人に野次馬が巻き込まれる。
乱闘もまた、火事が燃え広がるように広がっていく。
ドカンッ。
またどこかで火柱が上がる。
肉屋ギルドの周囲には、食料品の店や飲食店が多い。
爆発の元は油か、それとも小麦粉か。
周囲の建物を壊し、延焼を防ぐはずの兵士達は乱闘に巻き込まれている。
大きな火事なら兵舎から休憩中の兵士であっても駈けてくるはずが、その姿は見えない。
炎は祝福を受けたかのように燃え広がってゆく。




