表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/187

175

 閑散とした商業ギルドは、既に閑散としているのが当たり前かのように、そこにあった。

 それでもわずかなに、声の聞こえる部屋もある。そこで交わされる言葉は、決して色よいものではなかったが。


「どうするんだ。もう手がないぞ」

「確かに、困ったものです。周辺の村人までが街を避けるようになるとはね」

「おいおいおい、冷静に言ってる場合じゃないだろ。村の作物は持ち込まれず、市場に並ぶのは村まで直接買い付けに行った露天が僅かばかり、そうでなくても街間の荷運びの手が足りなくて、塩でさえ十分な量を運べてないんだ。ギルド員に払う給料だって、何もない所から湧いて出るわけじゃないんだぞ」


 体重を預けた椅子が、ギシリと音を立てる。


「とは言え、手の空いたギルド員は、既に荷運びに回しています。あとは、そうですね。肉屋ギルドはどうです。あちらも最近は閑古鳥でしょう。荷運びに使えるのでは?」

「肉屋ギルドはダメだ。あいつら、この前の強盗騒ぎからこっち、犯人捜しばかりしてやがる。冒険者だけじゃなく、露天の店主にまで突っかかってきやがって。兵士が止めに入ってるんだ。とてもじゃないが仕事なんて回せん」


 周りが静かなせいで、話声が良く響く。ギシリギシリという椅子の音も。


「長屋の冒険者達は、まだ兵士に抱えられたままでしたか」

「そうだ。ついでに言えば、他の冒険者はいつも以上にダンジョンに潜ってるよ。野菜が高いからな」


 元から大半の冒険者は魔物を狩って、肉と皮を売って暮らしている。

 食べ物が高くなったなら、今までよりも多く狩らないと暮らしていけないし、それ以上に高くなったなら、狩った肉を売らずに食べて暮らすようになる。

 冒険者が直接露天で売れるなら、他の食べ物の値段に合わせて肉の値段も上げれば良いが、間には肉屋ギルドがいる。高く買ってくれと言われて応じるかどうかよりも前に、前の強盗騒ぎから両者の仲は険悪だ。

 冒険者が活発に狩りをするのは良いが、市場には一向に肉が出回らない。肉屋ギルドが騒がしくしている間は、わざわざ売りに行こうという冒険者もいないだろうし、当分は肉は市場から消えたままだろう。


「……潮時でしょうか」

「あん?」

「いえ。では荷運び人の募集を村で行いましょう。例年なら街へ出稼ぎに来る者や、村を出て冒険者になる若者がいるはずです。それを荷運び人として雇います」

「ふむ。どう話を通す」

「村へ直接買い付けに行っている露天の店主から話を通しましょう」


 閑散とした商業ギルドには、二人の話声だけが響いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ