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 仮面をつけて街を歩くのにぎこちなさを感じていたのはいつの頃だったか。

 最近はほとんど毎日のようにこの姿で街を歩いている。

 あれはそんなに昔のことではなかったはずだ。今では逆に仮面を外した時に違和感を覚える。

 慣れた手順で浄化を行う。

 今日、浄化する場所は宿の一角。宿の主人が住んでいる部屋だということだ。

 魔を払う。

 病とは、魔が人に取り付くことで起こる不調だ。人を簡単に死に至らしめる。それは病魔と呼ばれる。

 浄化の儀式で、この場に残っている病魔は消え去る。

 消え去ったはずだ。

 だが、街では毎日のように、病魔が沸いている。

 病魔は人の命を吸って強くなり、数を増やす。数が増えた病魔は人の体を出て、新たな宿主を探す。

 だからこそ、人が命の力で病魔と闘っているのであれば、それを手助けするのは医者の仕事だ。

 今、街に蔓延っている病魔の力は強い。

 ほんの数日。戦う間もなく命を落とす者達が後を絶たない。

 だから、せめて、場所の浄化に手を抜くことは出来ない。

 治療所も、最近では浄化の炎が耐えることはない。

 病魔に敗れ、倒れた体。病魔は人が倒れた後、新たな宿主を探す。だが、それは多少の時間差がある。人が倒れてから、病魔が体を出る前に。浄化の炎で病魔を駆逐する。

 私を含め、医者達は昼夜を問わず病魔と闘っている。

 それでも、この街に現れた病魔を駆逐するには至っていない。

 もっと人手があればあるいは。そう思った時もあった。だが、街の兵士が元凶だなどと魔物の死骸を見せしめにしているのを見て、諦めた。

 病魔とはそのようなものではないのだ。

 形なきものを浄化するには、正しく聖別された塩や、聖水で場を清めたあと、祈りを捧げることが必要だ。あるいは浄化の炎が。

 聖別された塩や、聖水にも限りがある。

 宿の一角を浄化することは出来ても、宿全てを浄化するほどの量を(つい)やすわけにもいかない。病魔はすぐに新しい場所に現れるのだから。

 もっと迅速で、もっと広い範囲を浄化する。そのための手段が頭を過ぎる。


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