表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/187

151

 兵舎に文官が顔を出す。いつも兵舎に来る文官は変わらない。忌々しい顔だ。

 指示を伝えに来ているだけで、文官本人が指示を出しているわけではないと知ってはいても、忌々しい顔だと思う。

 一方的で、伝えるだけの木偶の坊だ。


「新たな指示が下った」


 そんなものはくそくらえだ。

 兵舎の中を見ろ、全員が消沈して静まり返っている。以前までの、武具を手入れする音もなければ、訓練場に向かう者も居ない。

 あの夜。見張りが続けて倒れた夜。

 なんとか隊をまとめてダンジョンを出た。全員が憔悴していたが、眠れぬ者も多かった。部屋に戻らず、休憩室で起きたまま過ごした者も居た。

 倒れた者以上に、行方不明が多く出た。

 連れ去られたのか、逃げ出したのかも分からないまま、霧のような何かを全員が恐れた。

 戦うことも出来ない呪いに怯えた。

 そして、街に帰って二日後、多少は持ち直した所で、行方不明だった臨時兵の一人が帰って来た。

 生きて帰って来たことを喜んだ。臨時兵は特にだ。冒険者として、以前からの知り合いだったのだろう。

 だが、帰ってきた臨時兵は、逃亡の罪を問われて街から追放された。追放の証である焼き印を入れられて。

 その結果がこの兵舎だ。

 霧みたいな呪い相手にどうやって戦えばいいのか。それなのに逃げたら追放だ。


「ダンジョンに赴き、呪いの元凶を討伐せよとのご指示だ」


 くだらねえ。

 元凶とはなんだ。それは剣で切れるのか。ダンジョンに居るのか。


「貴様、聞いておるのか!?」


 文官の物言いに腹が立ってくる。

 だからギロリと睨みつけた。


「な、領主様のご命令だぞ」


 そこまで言うなら、お前がダンジョンに行けばいいだろうが。

 腰が引けた文官を睨みつけながら心底そう思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ