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 街の裏門に数人の兵士の姿があった。

 普段であれば見張りの兵士がいるだけの裏門は静かで、街へ仕事で出入りする貧民の姿を見かけるだけだ。

 今日に限っては、見張り以外にも数人の兵士がいて、一様に何かを堪えるような顔をしている。そして、兵士以外にも一人。


「離せよ! 何でだよ! 俺がなんで!」


 叫ぶ少年は、押さえられた手を振りほどこうとするが、兵士はそれを許さない。

 別の兵士が真っ赤に焼かれた棒を手にする。

 少年は益々暴れるが、少年を抑える兵士の手は揺るがない。

 そして一際大きな少年の悲鳴で響いた後で、裏門は普段の静かさを取り戻した。


 裏門から出た直ぐの場所で、少年は痛む手を抑えたまま倒れていた。

 手の甲に押された焼き印は、街を追放された証。

 もう二度とこの街に入ることは許されないという、罪人の印。

 街の裏口から、外に放り出された少年は街に戻ることが出来ない。

 わずかに、裏口を出入りする貧民が倒れている少年を目にするが、罪人を助け起こす者は居ない。


 少年は臨時兵士だった。

 だが、ダンジョンでの行動中に逃亡した。

 その後、数日経って、兵の宿舎に戻ってきたのは、何か考えがあったのか、それとも単に泊まる場所がなかったのか。

 結局、無事に戻ったことで、少年は逃亡したことが明らかになり、罰せられた。

 臨時兵士であることから、兵士達から擁護する声がなかったわけではないが、兵士達に罪の重さを決める権限はない。


 日が暮れる頃になって、やっと立ち上がった少年は、重い足取りで街を離れる。

 日暮れと共に閉まる裏門の内側からは、数日前まで同僚だった兵士達の視線だけがあった。


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