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「なあ、そのマスク。俺にも作ってくんねえか」


 ここ数日で何度も聞いた言葉に思わず顔をしかめる。

 ここは革加工ギルド。皮を革にするのが仕事のギルドだ。しかもここは皮の買い取り窓口であって加工の依頼をする所じゃない。

 出来た革の確認に、簡単なものを作ることはあるが、それだけだ。

 服は服屋、帽子は帽子屋、靴は靴屋。マスクは……何屋なんだか知らないが、少なくとも俺の仕事じゃあない。


 マスクのことを聞いてきた奴には、ここは買い取り窓口で加工は請け負っていないことを伝える。それでも帰らない奴には、服屋でもあたって見ろと言って追い返している。

 まあ、言葉はもうちょいと柔らかくするがね。

 なにせ、マスクのことを言い出すのは、皮を売りに来る冒険者が多い。たまにそうじゃない奴もいるが、あれは屋台の奴だろうか。まあ、皮を売りに来るなら客だ。無下にするわけにもいかねえ。

 肉屋ギルドみたいに目の敵にされるのは真っ平だ。


 この前の狩りじゃあ、それなりの数の獲物が取れた。

 うちのギルドも十分な量の皮を買い取って、今はそれぞれの工房で革に加工中だ。

 だが、肉屋ギルドのほうはよくなかった。

 冒険者達が「協力してやってるんだから、飯に肉をつけろ」と騒いだわけだ。脅されたというからその意趣返しなんだろうが、そのせいで狩った肉のうち何頭分かは、ダンジョンの中で食われちまった。

 まあ、俺も頂いたがね。

 同じ食事を全員分、まとめて作るんだ。俺の分だけは肉抜きだなんてもったいないことはしない。

 そんなわけで、肉屋ギルドは、うちが買い取った皮よりも数頭ばかり少ない肉しか買い取れていないわけだ。

 それで恨みが晴れるんなら、安いもんだと思うがね。晴れるのかね。


 そういや、街まで連れて帰った兵士の坊主はどうなっただろうか。

 結局、狩りの間は、飯代分の雑用でこき使って、街まで連れて帰ったんだが。兵士の仕事から逃げておいて、戻れるものかね。まあ、俺には関係ないが。


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