131
野営の準備中に、顔見知りの冒険者からちょっとだけ話が聞けた。
どうも肉屋ギルドの買い取り窓口の奴が脅したようだ。
数日の間ダンジョンへの出入りが禁止されたり、冒険者の長屋が閉鎖されたりで、ダンジョンへ狩りに行く者は少なくなっている。
それは革加工ギルドが買い取っている皮の量を見ればはっきり分かる。
皮を革として使えるようにするには手間が掛かる。革加工ギルドに売らない奴が居たとしても、それは極少数だろう。
魔物の皮が減っているということは、当然、魔物の肉も減っているということだ。
こっちは、焼いて食べることが出来る分、肉屋ギルドに売らないという選択肢がある。
勿論、保存用に加工しようというならこっちも手間が掛かるが、十日やそこらなら置く場所にさえ気を付けておけば問題ない。
そして肉屋ギルドの窓口の奴は、魔物の肉を肉屋ギルドに売らず、屋台に直接売っているのだと決めつけたようだ。
狩られる魔物が少なければ肉も減る。肉が減れば売値も上がる。ただでさえ人が減ってる街だ、屋台で使う量だって減るだろう。
それを肉を買う量が減ったのは冒険者から直接買ってるんだろうと、決めつけて来た。証拠もないのに、だ。
肉の売買は、肉屋ギルドの特権ではあっても、売り買いしてないのに文句を言われる筋合いはない。
それを勝手に決めつけ、そして今度の狩りに参加するなら今日の所は勘弁してやる、だそうだ。
今、狩りをしている冒険者のほとんどは、何人かで狭い部屋を借りての共同生活をしている。その大半は、同じ村の生まれの奴らでまとまっている。
同じ村の生まれだからと言って、全員が冒険者をしているわけではなく、中には屋台を借りて食事を出している奴もいる。それを脅したらしい。
馬鹿な話だ。
そんな話が広まったら、それこそ本当に肉屋ギルドを通さずに売り買いしかねない。
肉屋ギルドを通すのはこの街のやり方で、冒険者達が生まれ育った村のやり方ではない。
今までだって気に食わないと思ってる奴もいただろう。ただ、街のやり方に従っていただけだ。
ただでさえ呪いだ呪いだと街中がピリピリしてるのに。
革加工ギルドまで巻き込まれないように、ちょっと考えたほうが良いかもしれねえ。




