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 街のすぐ近くまで来たことを臭いが教えてくれる。

 街のこちら側には、街の糞尿を捨てる穴があるから、はっきり分かる。鼻がバカになるから近寄りたくはないが、これもお役目だ。街の近く、特に穴からちょっと足を延ばせば入れる位置にある森は、不心得者が出易い位置にある。

 もし、そんな奴が居たら腕を落とす決まりだ。それでも、街に住めない奴ら、特に昼間出入りをして糞尿を街から運び出している奴らは、毎日穴の傍まで来るし、そして奴らは貧乏だ、食べる物に困って森に入って来ないとは言い切れない。


 滅多に居ないはずの森への侵入者だが、数日前に一人居た。あの汚い恰好は街に住めない奴らの一人だろう。まだガキだったが、これもお役目だ。とっ捕まえて兵士に引き渡した。

 刑はいつも見せしめを兼ねて広場で執り行われる。

 なんでも、犯罪をするとこうなるぞというのを分からせるためには、刑を多くの人に見せるのが一番なんだとか。


 穴の近くまで見回ると、穴の傍に人が倒れているのが見える。

 人の傍に桶が転がっている。糞尿を街から運び出している奴らの一人か。

 腹が空いて倒れたか、それとも病か。

 穴の見回りは兵士の仕事だ。

 森の外は俺の仕事場ではない。森の中に倒れていたなら確認だけはするが、近寄りたくはないものだ。

 死骸には毒と病が巣食っている。

 獲物を仕留めたら、その日のうちに解体する。内臓は特に腐るのが早い。そして腐ると毒が沸き、病が宿る。

 魔物に食われたわけでもないのに、倒れているものなんて特に危険だ。病に倒れたものは、その肉を食べた相手にも病を写す。

 親父からは「近づくな」と教わった。肉を捨て、皮だけを手に入れようとするのでもダメだと。

 だから、森の外に人が倒れていようと、俺は近づかない。

 あれは人の姿をしているだけの、毒と病の詰まった皮袋だからだ。


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