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飽きた。
食べ物はあるし、泥炭も数日分を確保して乾かしている。
水は入れ物が小さいから毎日汲んで来ないといけないけれど、汲むのはすぐ傍にある川からだ。
食事の用意だって肉を火で焼くだけ。手間を掛けようにも野菜も調味料もない。
だから、肉が少なくなるまで拠点で過ごそうとしても、やることがない。
腕が痛い間だったら、寝て過ごしてもよかったかもしれない。
本もゲームもない所で、寝て過ごすだけなのは意外に難易度が高い。
そういえば、宿で働いていた時も、部屋に居てもやることがないからと、街をうろついたりしていたっけ。
結局、暇に飽きてダンジョン探索をすることにした。
泥炭を拾うところの奥は、水の中の魔物が怖いし、暗い通路は骸骨が面倒だ。だから行く先は少し街のほうに戻ってからの脇道にしよう。
街まで往復した時に気づいた道だ。思い出せば、最初に来たときも、脇道があるのを見た気がする。ここに拠点を作ってからは、奥にしか興味がなくなってしまって、手前の脇道のことなんて、まったく思い出さなかった。
奥の道は進むにもマイナスの感情が溜まってしまったので、まだ問題が見つかっていない手前の脇道のほうが楽そうに見える。
本当はどうなのかは行ってみないと分からない。
でも、泥炭の場所よりも奥に進んで、水の中から魔物が出て来たり、暗い中で骸骨を殴りながら進むことを考えたら、それよりは良いような気持ちになる。
乾燥中の泥炭はそのまま、肉は探索中に食べる分だけを焼いて持って行く。
残りは壁際に寄せて、今までと同じように泥炭の陰になるように置く。
兵士達が通ったように、誰か通るかもしれないから、見え難いようにしなければいけない。
背負い袋の中には桶も含めて道具は全部入れる。
行った先で何か見つかったら持って帰るためだ。
背負い袋に入るものなら袋に入れるし、泥炭のような柔らかいものだったら桶が必要になる。
脇道を奥まで進み切るつもりなら、肉も泥炭も持てるだけ持っていったほうが良い。でも、いきなりそこまでやるつもりはないし、魔物に会った時に重すぎて逃げられないのも困る。
だから、今日の夜には戻ってくるつもりで行く。
食べ物は少し多めに持ったから、明日に戻ってくるのでも良い。ああ、でも、安全に寝れるか分からないし、やっぱり今日の夜には戻ろう。
荷物を背負って歩きだす。




