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その日のギルドは張り紙が張られたものの、その前には誰も居なかった。
僅かに、魔物の肉を売りに来た冒険者が、ギルド員から張り紙の説明を受けるだけだ。
祭りの前には同じような張り紙でも、集まる人を前に担当のギルド員が何度も読み上げていた。それを思えば随分と寂しい光景だ。
「こいつは、人が集まらんかもなぁ」
買い取りの受付に立つギルド員がつぶやく。
最近は肉を売りにくる冒険者も随分と減って、買い取りの仕事も暇でしょうがない。
「他の所でも集めちゃどうです?」
通りかかったギルド員がそのつぶやきを聞きつけて返す。
「他の所ってどこだよ。革加工ギルドにも貼ってもらうか?」
「いや、革加工ギルドじゃだめっすよ。売りに来る冒険者なんて、うちと変わらないでしょうに」
「じゃあどこだよ」
「屋台の通りとかどうです」
「ああ、飯食いに来たやつらを狙うのか」
「それもありますけど、なんか屋台の店主の中には、冒険者と一緒に暮らしてるのもいるって話っすよ。同じ村の出のやつらだとか」
そうか、と返してふと考える。
「そいつらは、屋台に直接、肉を売ったりしてねぇだろうな」
「さあ? 売ってるんじゃないっすか?」
「そいつはマズいだろ」
「分かんないっすからね。自分達で食べる分だって言われたらそれまででしょ。同じ所に住んでるんだから、屋台の材料と一緒に置いてあってもどうしようもないでしょ」
街には取引のルールがある。肉を売るのは肉屋ギルドの縄張りだ。それを無視する奴らは、時には実力で排除してきた。
だが、魔物を狩った冒険者が自分で食べるのまで止めることは出来ない。狩りの帰り道で食べることだってある。肉屋ギルドの縄張りはあくまで売り買いでしかない。最も、加工肉であれば、加工する技術を持っているのは肉屋ギルドのメンバーだけだ。当然、肉屋ギルドからしか買うことが出来ない。
ふんっ、と鼻息を吐いく。
それよりも今は人集めだ。革加工ギルドの話で動いてるとは言え、肉屋ギルドで告知したのに人が集まらないというのは気にいらない。




