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 重い荷物が肩に食い込む。足を前に進める度に、背中の荷物がずしりと圧し掛かってくる。

 それでも若い頃に比べて随分と歩き方は変わった。体力に任せた歩き方では、一歩一歩にかかるずしりとした重みはもっと酷くなる。出来るだけ体を揺らさずにスルスルと歩くのがこつだ。

 とは言え、山道ばかりのこの道では、体を揺らさないにも限度がある。何度も通っているこの道は、いつになっても段差ばかりだ。

 荷車が通るような広い道なら歩きやすいが、そっちは途中に街がいくつも挟まる程に遠回りになる。

 だから、自分を含めた荷運び人は、荷物を背負って山道を通る。


 重い荷物の中身は塩だ。

 海沿いの街で荷物を受けて、山道を通ってダンジョンのある街まで運ぶ。

 ダンジョンのある街も、昔はいくつもある鉱山を結ぶ交易都市だったらしいが、今ではダンジョン以外に目ぼしいものはない。奥にあった鉱山はほとんどが取り尽くされて山を閉じたと聞いている。

 塩は、量の割に重い。

 それを大量に背負って歩く、この仕事は重労働だ。

 一人で歩いていると、気を紛らわすことも出来ないから、余計に重く感じる。


「ふう」


 汗をぬぐって、水を飲む。


 いつもは同業者数人と共に歩く。

 途中には野宿もあるのだ、一人旅は物騒でしょうがない。

 しかし、今は一人だ。


 海沿いの街でも、ダンジョンのある街でも、呪いが広まっている。

 同業者の中にも呪いで倒れた者がいる。

 そして、僅かな幸運な者には、別の街に移動した者がいる。最も、別の街に行ったところで、そこに呪いがないのかは知らない。選べる伝手があるのは幸運なのだろう。

 残りの知り合いの同業者とは、旅の日程が合わなかった。

 それが今、一人で歩いている理由だ。

 出発を遅らせるには、街で泊まり続ける宿代が必要だ。街の中で野宿なんてした日には、兵士になにをされるのか分かったものじゃない。下手をしたら、街から追い出されて、二度と街に入れなくなる。


 視界が開ける。

 ここからは下りの道だ。

 遠くの景色が見えるのは気分が良い。

 だが、逆に遠くから見られるということでもある。魔物に見つからないうちに麓まで下りたいところだ。

 同業者が三人もいれば、この辺りに出る魔物を倒すのは難しくない。

 今は一人だ。やってやれないことはないが、わざわざ危険な目に会う気もない。

 一歩毎に、背中の荷物がずしりと圧し掛かってくる。


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