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重い。間が悪い。腕が痛い。疲れた。
ダンジョンを足早に進んでいたら、ウリボアに出会った。
相も変わらず突進ばかりしてくるウリボアと戦った。
麦を買って戻る途中では、荷物が重くて逃げれないし、戦う以外にはなかった。荷物がなくてもウリボアのほうが速いけど。
突進を躱しながらこん棒で殴るのは難しい。野球のバットのように振ろうとすると足が止まる。躱し切ってから振りかぶっては間に合わない。だからこん棒を逆手に持って、ウリボアの顔を横から突くようにして攻撃した。
小突く程度の攻撃になってしまって、倒すのは無理かとも思った。
でも何度目かの攻撃で、ウリボアが転んでくれたお陰で勝てた。
どうも転んだ時に足を痛めたらしく、突進の速度がすごく遅くなったのだ。
ウリボアはその場で解体して、肉と皮に分けた。残りの骨とか内臓は捨てていく。そんなに持てないし、使い道が分からない。
皮と肉だけでもかなりの重さで、一人で運ぶのはキツい。
でもここに残して置いて、誰かに持って行かれてるのも嫌で、なんとか持ち上げた。
小麦を買って帰る途中じゃなかったら、もう少し楽だったのに。
そもそも、小麦を買いに行くよりも前に見つけていたら、街に入らずに済んだのに。
間が悪い。
背負い袋を担いで、肉は皮に包んで手に抱える。
寝床は遠い。
まだ半日以上はかかると思う。
腕が痛いし、息も切れる。
こんな状態でまたウリボアにでも出会ったら勝てないから、ダンジョンの中をこそこそと隅のほうを歩く。疲れる。
何度も捨てて帰ろうかと悩みながら歩く。
休憩して、息を整えて、歩く。
休憩して、腕の筋肉を解して、歩く。
休憩して、水を飲んでから、歩く。
捨てて帰れればいいのに、と思いながら歩く。
おじさん達との狩りで泊まった水場は過ぎた。人が来ないならここに置いて、後で取りに来ようかとも思う。
でも兵士が通っていった道だから、誰が通るかも分からないと、肉を抱え直して歩く。
歩く、歩く、歩く。
重い。間が悪い。腕が痛い。疲れた。




