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 物は試しにと端材を使って作ってみた。まあ悪くない。多少息苦しい感じがするが、臭いが抑えられるのは悪くない。皮を処理する薬品は、いつも酷い臭いがする。


「おう、なんだ。ケッタイなもん身に着けてんな」

「あ゛あ」


 少し声が籠るな。ちょっとばかり大きめの声にすればいいか。


「おう、臭い除けにちょっとな」

「あー、なんだ、今更。確かに臭いはキツいがよ、今更だろ」


 何年もこのギルドで皮をなめしている。作業中の臭いを今更と言われれば今更だが。まあ、臭いが抑えられるのは悪くはないだろう。


「まあ、そう言うな、何年経ってもキツいものはキツいからな。んで、何か用事か」

「ああ、最近、皮の買い取りが少なくなってるだろ……」


 話すにはちょっとマスクが邪魔だ。マスクを外してもいいが、慣れて置いたほうがいいかとそのままで話す。


 話の内容は、普段、皮を売りに来る冒険者が少ないということについてだった。なんでも、呪いがどうとかで長屋が閉鎖されて、長屋暮らしの大半が臨時で兵士に雇われているらしい。

 ってことは、今日来た坊主は少ない方の奴か。あの身形で宿に泊まり続ける金があるとは思えないが、どこで暮らしているんだか。

 最もそれ以前に、街に革を買いに来る商人も少なくなったらしく、売るほうもあまり良くはない。

 今日はそのことで、親方達で話し合いがあったと言う。

 ここはギルドとは言っても、親方連中の寄り合い所帯だ。商業ギルドのようにまとまってるわけじゃあない。素材の買い取りや、商業ギルドとの折衝はギルドでやるものの、革加工の仕事はそれぞれの工房でやっている。

 話し合いの結果は、売る方は商業ギルドに頼んで別の街へこっちから売りに行く、買う方は肉屋ギルドと合同でダンジョンで狩りを出来ないか、ということになったらしい。他のギルドに頼むのは、もちろん革加工ギルドだ。


「ああ? 向こうが納得するのかよ、それ。狩りと言っても祭りの時は冒険者雇ってるだろ。誰が狩るんだ?」


 商業ギルドのほうは、話の持って行き方次第だろう。あっちだって売り買いが少ないのは困っているはずだ。

 だが、狩りのほうはどうだ。狩りに出ている冒険者が少ないって話なのに、集まるのか。それにギルドから誰を出すか、呪いがダンジョン絡みだと噂されているこの時に。


「ダンジョンに入るのは、冒険者に慣れてる奴に決まってんだろ。なあ、行ってくれそうな冒険者に心当たりはないか?」


 内心で、いや、顔を思いっきりしかめて不満を表す。こいつが言ってるのは俺にダンジョンに入れってことだ。しかも冒険者探しも俺にやらせようとしている。

 マスクに手を触れる。

 簡単に作ってみたが、もうちょっとしっかりとした作りにしようか。あの坊主の言う通り、このマスクが呪い除けになるならいいんだが。


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