表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/187

114

「なあ、あれに呪いの力なんてあったか?」

「あるわけないでしょ。あなたがいつも頭を叩き割ってるじゃない」

「大方、不満の矛先をずらしたかったんだろうさ。医者が浄化してもまだ患者が増えてるからな」


 屋台で店番をしながら、なんとはなしに辺りの声を聞く。

 今、聞こえてきたのは、冒険者らしい三人連れの言葉だ。まあ、そんなものだろうな、と思う。

 屋台をやっているといろんな噂を聞く。

 自分の屋台は、昼間に作ったスープに、注文を受けてから麺を入れて出している。この麺スープは麦粥よりもよっぽど食べやすいと評判だ。

 作る手間は店を開ける前だけで、店を開けた後は、注文に応じて麺とスープを(うつわ)に入れて出すだけだ。だから店を開けた後は、大半の時間をただ待って過ごすことになる。

 暇つぶしに辺りの声を聞いてれば、まあ、いろんな話が聞こえてくる。俺には学がないが、この屋台を初めてから少しばかり賢くなった気がする。


 街は呪いが広がってから、随分と静かになった。

 街の外から来る商人が減り、そのうち朝晩と食事に来ていた冒険者の姿も少なくなった。なんでも長屋で呪いが広がって閉鎖されたんだそうだ。もっとも、馴染みの奴らがみんな呪われたわけではなく、ほとんどが兵士の所で働いているらしい。

 数日前に、兵士があの魔物を運んでいた時にも、見知った顔がいくつもあった。


 それよりも後、昨日のことだ。

 この通りの屋台の一つが店を開かなかった。

 街が静かになってから、割りに合わないと店を開かない屋台もいくつかあった。だが、その屋台は自分で開かいことを選択したわけではなく、呪いを受けて街から運び出されたらしい。

 呪いの元凶が倒された後に、呪いで倒れる。なら元凶ってなんなんだ。


 割りに合わないと店を閉めた奴らの中には、仕入れ元や故郷の村に移動したり、別の街で屋台をやるのだと出て行った者もいる。

 俺も街を出て暮らしていけるならそうしたいが、伝手にも、金にも乏しい。

 仕入れている村に厄介になるにも、冬を越せるくらいの金がいる。それでなくても、あの村からは冬になる度に、兵士の手伝いをしに街に来る若者がいるんだ。俺が行ったところですぐに追い出されるのが落ちだろう。

 この街で生活し続けるしかない。なにか呪いから逃げられる方法があればいいんだが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ