113
布を長く数回折りたたんで、口と鼻を覆うようにして頭の後ろで結ぶ。
普段は体を拭くのに使っている布だ。使った後はちゃんと洗ってはいるけど、なんとなく臭い。それでも他に使えそうな布は持ってないから我慢する。
ここはダンジョンの出口の近く。いつ他の冒険者に出会ってもおかしくない場所だ。
残り少ない小麦で食事を賄いながらウリボアを探したが、結局、見つからなかった。
あの場所で小麦を食べ切るまでいたら、街に帰るまでの数日を食事抜きで歩くことになる。だから、おじさん達と一緒に狩りをしたルートを辿って、街に近づきながら探した。
結局、見つからずにこの場所。もう食べ物もないし、一度街に入らないといけないと、心を決めようとした所でマスクを身に着けることを思いついた。
あまり肌触りの良くない布は、マスクにするには目が粗い。だから何回か折りたたんで厚さでカバーする。カバー出来ていて欲しい。
街に向かって歩きながら、街でやることを整理する。出来るだけ短い時間で街を出たい。
まず、ウリボアの皮を革加工ギルドに売る。おじさん達との狩りだと、ダンジョンから帰った時には革加工ギルドと肉屋ギルドに寄っていた。ウリボアの肉は全部食べてしまったから、今日、寄るのは革加工ギルドだけで良い。
その後、売ったお金で小麦と果物を買う。野菜は、どうしよう。家に居た頃は野菜を食べろとしつこく言われたけど、買ったほうが良いだろうか。皮が売れたお金で考えよう。とりあえずは小麦。塩はまだあるから、小麦を買った後で果物。お金に余裕があったら野菜。食べ物を売っているお店は、同じ通りに集まっているから、野菜を買っても買わなくても、あまり時間は変わらないはず。
考えながら歩いているうちにダンジョンの出口が見えてきた。
明るい所もあると言っても、薄暗いダンジョン。外に出るのはとても久しぶりな気がする。
長屋の人達はどうしているだろう。
気にはなるけど、それよりもやっぱり病気が怖い。買い物中に誰かと会えたら聞いてみたいけど、長屋まで行くのは時間が掛かり過ぎる。
まずは革加工ギルド、次に小麦、そして果物。
呼吸は心持ち浅めに、ダンジョンを出る。太陽が黄色い。




