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ダンジョンの調査は散々だった。
呪いの原因を排除するのだと、臨時雇いを募ってダンジョンに入れとの命令だった。
季節は夏、冬の掃除とは違って付近の村々も畑仕事に忙しく、雪で街を出ることが出来い旅人もいない、そんな時に臨時雇いが集まるはずもない。
ましてや、街の中では呪いに倒れる者が何人も出て、街と街を渡り歩く商人はほとんど寄り付きもしなくなった。
俺自身は兵士としての仕事があるから、逃げ出すことこそ出来ないが、臨時雇いの募集だと言って数日の間、街を出ていたほどだ。
村人に声を掛けるという名目で、いつもより少し長い街道巡回を続けて街に戻った。
出来れば、俺が街を出ている間に呪い騒ぎが収まってくれれば良かったんだが。
街に戻ったら、冒険者の若者達が臨時雇いとして入って来た。
なんでも、いつも泊まっている長屋が閉鎖されてしまったのだそうだ。大方、呪いを受けた奴でも長屋に居たんだろう。街がこの有様だ。ダンジョンに出入りしている奴らが、全員無事とは思えない。
安く泊まれた長屋が閉鎖されて、普通の宿に泊まる金のない若者ばかりが臨時雇いの募集に応じたようだ。
冬と同じように若者達に訓練を施して数日。ダンジョンに向かった。
始めに向かった先は、冬に骨を掃除した場所だった。
目的が呪いの原因を排除とは言われても、何が呪いの原因なのかはさっぱりで、まずは毎年と同じように骨掃除をするべきだと言う意見もあって、まずは訓練の延長のつもりで行ってきた。それが一回目。
そこでは例年との違いは特になく、骸骨を初めて見る臨時雇いを叱咤しながらの往復となった。
二回目のダンジョン行き。
今度は別の所に向かうべきだと、文官からの指摘があって、行先を見知らぬ道に変えた。
見知らぬ道とはいえ、無策で行くつもりもなく、臨時雇いがいつも狩りをしていたという道を辿り、そこよりも少しだけ奥を調査することにした。
そこに居たのが、蛇に似た、牙だらけの大きな口の魔物だった。
気づいた時には臨時雇いの一人が、川に引きずり込まれ、他の若者達も呆然とそれを見ていた。骸骨の時にもあれだけ取り乱しては怒られていたのに、まったく進歩がない。
一番川の近くにいた若者を引きずって、川から引き離している間に、それは現れた。
大声で指示を出しながらなんとか倒した時には、気絶している奴もいれば、足を食いちぎられた奴もいる散々な状態で、調査を中止して街に帰って来たのだ。
魔物の死体も持ち帰ったが、あれが何なのかは分からない。文官に引き渡しはしたものの、あれはどうするんだか。
臨時雇いの若者も初めて見たと言う。ダンジョンの奥には強い魔物が数多くいるという噂だが、あれもそのうちの一体なのだろうか。




