101
怖かった。
思わず逃げてきてしまった。あんな場所を探索とか恐ろしい。
ウリボアがぐるぐると回りながら水の中に引き込まれていった。あれはなんだったんだろう。
いつもの拠点で息をつく。
あまり長い日々を過ごしたわけではないけれど、この場所は落ち着ける。今日はもう出掛ける気にもなれなくて、寝床に腰を下ろす。
回り方からして、ウリボアが自分で回転していたわけではない。四本足の魔物にそんな芸当は出来ない。何かウリボアの傍に見えたような気もするけど、よく分からなかった。
水の中に引き込んだということは水の中で生活している生き物だろうか。
大きな魚。なにか違うように思う。魚と回転のイメージが合わない。
ヘビ。ヘビなら海蛇という言葉もあるし、水の中で生きているのもいそうに思う。あ、でもヘビの食事は丸飲みか。回転とはやっぱりイメージが合わない。
後は、カバはどうだろう。河馬と書くし、水の中の生き物だろう。口の大きくてのんびりしてそうな印象があるけど、本当はどうなんだろう。本物を見たことはないし。でもあの体で回転するイメージはやっぱり合わない。
あとは何かいただろうか。
水、回転だとカバよりは細身のほうがよさそうだ。
ワニ、そうだ、鰐ならそれっぽい。ああ、でも、不味い。鰐なら、昔にニュースで人が襲われたというのを見た覚えがある。遠くの国の話だったけど、ここに居るなら不味い。ウリボアですら人を見ると襲い掛かってくるんだ、鰐がいたら襲い掛かってくるだろう。水の中から。
水は不味い。中がよく見えないし、水を汲まないわけにもいかない。
泥炭はどうだろう。重い泥だけど、鰐はあそこにも入ってこれるんだろうか。それに地上、地上でも移動できたはずだ。どのくらいのスピードで移動出来るんだろうか。あの場所には泥炭を取りに行かないといけないのに。
怖い。
近づきたくない。
でも泥炭を拾ってきて火を起こさないと、麦が残っててても食べれなくなってしまう。




