第百九話 厄介なお荷物
こんにちわ。
不動産屋に向かったウインメタルとエリカ。
果たして彼らの目的とは?
上田に到着したウインメタルとエリカは、幽霊屋敷の実態を探るべくその屋敷まで下見に行った。この物件は現在売りに出されているので勝手に中に入ることはできなかったのだが、早速女性の幽霊を目撃し、霊的エネルギーの発生も確認できた。そして、ウインメタルは中に入って物件の実態をさらに詳しく調べようと、幽霊屋敷を取り扱っている不動産屋、しなの不動産上田営業所へと向かった。駅から徒歩五分にあるこの不動産屋は、二人が駅前に戻ってきたときにはまだ開いていなかったので、とりあえずウインメタルは変身を解除して隼人に戻り、上田駅構内にあるカフェでモーニングを堪能した。
「食欲よりも眠気が勝っちゃったからな。朝早くから開いているカフェがあってよかった。」
新幹線の中では到着まで熟睡していた隼人だったが、さすがに空腹には勝てずホットコーヒーとサンドイッチを幸せそうに口に運んでいる。その横で、エリカが隼人に尋ねた。
「隼人、この後は不動産に向かいますが幽霊屋敷について取り合ってもらえるでしょうか?」
「向こうだって厄介な物件を早く手放したくてたまらないはず。だからあんな立派な家なのに価格破壊レベルの安さで売りに出してたんでしょ。とにかく中を見せてくれなければ僕達も調べようがないもん。」
隼人は妙に自信満々でそう言い切った。そして、少し遅めの朝食を終えた隼人はエリカと共に駅から出て不動産屋に向かう。
「うーん、ちょっと早かったかな?」
「開店まであと10分です。丁度良いとは思いますが?」
現在9時50分。しなの不動産に到着した隼人とエリカは店が営業を始めるまで待つことにした。そして10分後、シャッターが開き営業が始まったタイミングで隼人とエリカは店の中に入る。
「いらっしゃいませー。どうぞこちらにお掛け下さい。」
若い男性の職員に案内され、二人は席に着いた。
「本日はどのような御用件でしょうか?私、平原が承ります。」
「聞きたい物件があります。」
隼人はそう言うと、スマホの写真を平原と名乗る男性職員に幽霊屋敷の写真を見せた。その瞬間、平原の表情がこわばった。
「お、お客様…。この物件は、その…。」
「分かってますよ。この辺りじゃ有名な幽霊屋敷なんでしょ?」
隼人は軽い感じでそう言った。一方平原の方はまさか事故物件だと分かっていて話を振ってくるお客がいるとは思っていなかったらしく、かなり困惑していた。
「あ、あんまり大きな声では言えないのですが、以前この物件に住んでいた新婚夫婦が1カ月で逃げだした後、当店にクレームを入れてきましたので…。我々としても慎重に扱っていきたいと思いまして…。」
「まあ、そうですよね。」
隼人も平原の言い分には納得した。楽しみにしていた新生活を台無しにされたのだから、苦情の一つも言いたくなるのも無理はない。
「正直お宅に無理を言っているのは承知なんですけどね、僕達もあれをどうにかしてほしいって出動依頼が入った以上無視するわけにはいかないんです。」
隼人は無茶ぶりを言っている事を詫びつつ、自分の意見を述べた。平原の方も目を丸くして二人に聞く。
「あ、あの…。お二人は一体?」
「これで納得してくれますか?エリカ!」
「はい!」
すると、隼人は右腕だけメタリックアーマーを展開させ、エリカも左腕をアンドロイドモードにする。
「う、ウインメタル…。」
「そう言う事です。とにかく中に入って様子を調べたい。見せていただけませんか?」
隼人は一番聞きたかった事を平原に切り出した。そして、平原は少し悩んだ後、立ち上がって言った。
「少々お待ち下さい。」
平原は後ろにいる上司と思しき中年男性の所へ向かった。
「店長。」
「ん、どうしたんだ平原?」
「う、ウインメタルが来て例の屋敷を見せて欲しいと言ってます。」
「な、何ぃ?」
平原の話を聞いた店長も困惑していた。平原はさらに続ける。
「屋敷をどうにかしてほしいっていう依頼があったとかでここまで来たそうなのですが。」
「どうにかしてほしいのはこちらも同じなのだが…。う~ん、いいだろう。案内してやれ。」
「よろしいのですか?」
「うちが売り出している以上、見学希望者を断るわけにはいかないだろう。」
「分かりました。」
店長との話が終わると平原は戻ってきた。
「お待たせしました。」
「話は纏まったみたいですね。」
隼人は少し嬉しそうな顔で言った。
「ええ、ご案内いたしましょう。」
「よかった。」
隼人は一気に表情が明るくなった。そして立ち上がって平原に言った。
「じゃあ、早速案内してくれるんですね?」
「いえ、それは無理です。」
「どうしてなのでしょうか?」
否定した平原に今度はエリカが質問する。
「実は、午前中は別のお客様と物件見学の予定が入っていますので。13時以降でしたらご案内できるのですが。」
「うーん。それは仕方ないか。分かりました。じゃあまた後ほど来ますんで。行こうか、エリカ。」
「畏まりました。」
こうして物件見学の約束を取り付けた隼人とエリカは店を後にした。
「よかった、これで中に入れる。」
「それはいいのですが、まだ3時間近くあります。どうされますか?」
「うーん、そうだね。まだまだ情報不足だから、以前あの家に住んでたって人や屋敷に関して知っている人に聞き込みしよう。かつて住んでいた人のリストはある?」
「勿論です。既にデータは確保してあります。」
「分かった。とりあえず手分けして更に詳しく情報収集だ。」
「了解しました!」
こうして隼人とエリカは屋敷に何ないされるまでの間、二手に分かれて屋敷に関して調査することにした。
こんばんわ。
なんとか屋敷の内部を調査する手立てが出来たウインメタル。
果たして、幽霊屋敷の中で彼らを待ち受けているのは…?
次回もお楽しみに!




